ながされて、絆されて、ふりむいて
「どちらにせよ、児玉さんはその幼なじみのこと、好きでしょ」
「…………さぁ、どうでしょうか」
すべて見透かされているのか、その言葉は断定だった。
対する答えは無駄なごまかしでしかなくて、それ以上何も言えなかった。
言われた通り、わたしはとっくに凪が好き。
いつからなんて思い出せないくらい。凪のとなりにはずっとわたしがいたい、他の子なんてやだ。それだけをずっと、考えている。
「ちなみにね、俺たぶん、同じくらいに好きだよ」
「……へ?」
思考回路を凪で埋めていれば、突拍子もない言葉が降ってきてすぐに引き戻された。教壇に立つ先生を見上げると、角砂糖を溶かしたカフェオレのように甘い双眸に見つめ返された。
ぶつかった視線が月のひかりのように弾けて、口角が左右均等に優等生みたく上がった。
「好きだよ、花鈴ちゃんのこと」
──どういう脈絡だったのか、どういう意図だったのかわからない。「本気だけど本気じゃないことにしてあげる」とよくわからないことを言われたから曖昧に笑ってやり過ごした。
この日の"好き"を明確に覚えている。真っ黒の髪をさらりと触れられたことを、覚えている。
先生は、わたしに好きを送り込んだはじめてのひとだった。
◻︎▫︎