ながされて、絆されて、ふりむいて
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「(あ、凪に連絡してなかった)」
迎えにきてくれる凪に連絡を入れるのを忘れてしまっていた。
いつも来てくれる時間は21時半。15分も過ぎてしまっていて、慌てて《今から行く、ごめんね》と右側から吹き出しを送った。
駅前のビル4階からエレベーターで1階まで降りる。曲がり角、後ろ姿の凪を捉えて声をかけようとして、止めた。見知った凪の声と、別の誰かの会話が耳に飛び込んできたから。
「ね、そこのイケメンくん」
「……俺?」
「そー。俺しかいないよぉ」
凪に声をかけているのはわたしと同じ塾に通う女の子だった。
塾といっても半分予備校で、彼女は浪人クラスに通う、ちょっぴり派手めな子。綺麗に染まり切った淡いピンクベージュの髪色に、天高くどこまでも届きそうな長いまつ毛。
誰に対しても砕けた話しかたをしていて、それこそ矢野先生とも仲良さげに話しているのを何度か見かけた。
わたしは一度も話したことがないけれど、たぶん住む世界が違うような、真逆の容姿と性格を持つ女の子だった。
「おにーさん、ここに通う白澄の子、迎えにきてるよね?」