ながされて、絆されて、ふりむいて
児玉家から茅野家までの歩き慣れた道。同じ学校だったら毎朝となりを歩けたかな、ってたまに考えてはこころに寂しさの色を滲ませる。
すこしだけ歩いて、曲がり角の先。視界に飛び込んできた光景を認識した瞬間、目を覆いたくなった。
「……っ、」
すぐに逸らしたくなるような都合の悪い光景。
はじめてだった。
目に、脳裏に、思い出を綴じる脳内フォルダに、焼き付けたくないのに不可抗力で刻まれてゆく。リズムよく鳴っていた心音までその光景に支配権を奪われる。
だぼっと大きめ、深青のトレーナーを着た凪が立っていた。よく知るシルエットと親しげにするのは知らない女の人。お互いの吐息を感じられそうな距離、それはずっとわたしの特権だったのに。
女の人は凪の首に腕を絡ませて、なぎはポケットに手を入れたまま顔を傾けて、そのひとにくちびるを重ねた。セットされていない漆黒が動いた。