スケッチブック

第五章/にじみ色

――芽衣子

雨が降り出したのは、放課後だった。
さっきまで明るかった空が、
嘘みたいに暗くなって、
校舎の窓に、細かい粒が打ちつけられる。

私は、昇降口で立ち尽くしていた。
傘は持っているのに、
外に出る気になれなかった。
少し離れたところで、
雪と七星が話している。
「ほんとに、この辺わかんなくて」
七星は笑いながら言って、
雪は少し困った顔で、
それでも、ちゃんと話を聞いている。

——似合うな。

そう思ってしまった瞬間、
胸の奥が、きゅっと縮んだ。

誰にでも優しい雪。
純粋で可愛い七星。
その隣にいるのが、
どうして私じゃないのか。
答えは、わかっている。
私が、何も言わなかったから。
私はまだ彼の視界にさえもかすめていない気がした。
七星のように気軽に話しかけることすらも出来ない…

イヤホンから、作楪の声が流れる。

「色ってね、
重ねすぎると、
どれが最初かわからなくなるんだ」

スケッチブックを開く。
鉛色、黄色、ピンク、青。
何度も塗り重ねたページは、
もう、きれいな色じゃなかった。

消そうとして、
消せなくて。
私は、
静かにページを閉じた。
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