スケッチブック
――雪

その日のことを、
何度も思い返している。
芽衣子の机のそばで、
声をかけるべきだった。
隣に立つ誰かより、
先に。
でも、
タイミングを逃した。
「誰にでも優しいね」
そう言われたことがある。
褒め言葉のはずなのに、
今は、重くのしかかる。
誰に一番優しくしたい?

薄暗くなっていく…
作楪の配信が始まる。

「灰色って、
終わりの色に見えるけど、
実は“途中”の色なんだ」

画面を見つめたまま、
雪は動けなかった。

——途中、なのか。

芽衣子の背中が、
遠ざかっていく気がした。
嫌だ…
そんなの嫌だ!

追いかけなかったのは、
優しさじゃない。
ただの、臆病だった。
そのことに気づいたとき、

もう、教室の灯りは消えていた。
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