スケッチブック
第六章/灰色
――芽衣子
雨は降っていなかったのに、
空はどこか重たかった。
教室の窓から差し込む光は鈍く、
机の影が、ぼんやりと灰色に伸びている。
私は、スケッチブックを開いたまま、
同じページを見つめていた。
線は何度も重なって、
最初に描いた輪郭は、もう見えない。
「芽衣子、これ」
振り向くと、
雪が立っていた。
その隣には、
クラスの女子が一人いる。
「ありがとう、雪」
彼女はそう言って、
自然に笑った。
あまりにも自然で、
胸の奥が、静かに冷えた。
——やっぱり、そうなんだ。
雪は何も言わない。
言い訳もしないし、
視線も合わせない。
それが、答えのように思えた。
「……ごめん」
誰に向けた言葉だったのか、
自分でもわからない。
放課後、
イヤホンをつける。
「迷った線を、
全部消したくなる日もあるよね」
作楪の声は、
いつもより静かだった。
消しゴムを手に取る。
強くこすりすぎて、
紙が少し、毛羽立つ。
——もう、いい。
私はスケッチブックを閉じた。
描きかけの色も、
言えなかった気持ちも、
全部、灰色の中にしまい込んで。灰色