スケッチブック
――芽衣子

それから、
はっきりした出来事は、
何もなかった。

雪は、
相変わらず優しかった。
七星と話し、
後輩の面倒を見て、
私にも、普通に接した。
だからこそ、
何も言えなくなった。

スケッチブックを開いても、
線が、うまく引けない。
消しゴムの跡だけが、
紙に残る。

——描けない。

色が、
決められない。

ある日、
放課後の廊下で、
雪と七星が並んで歩いているのを見た。
楽しそうだった。
それだけで、
十分だった。

私は、
ページを閉じた。
真っ白だったはずの紙は、
もう、
白じゃなかった。
それは、
失恋の色でも、
絶望の色でもない。
何も選ばれなかったまま、
残ってしまった色。
——灰色。
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