スケッチブック
――七星

夜は、まだ少し落ち着かない。
転校してきて、
一日分の出来事を思い返すと、
胸の奥がざわつく。
スマホを触って、
何となく開いたアプリ。
ゲームや雑談が多い配信だ。
前の学校で仲良かったゲーム友達が進めてくれたその配信に、ごく稀にゲームを見に行く。
たまたま今日、何気なしに開いたその配信。
おすすめに出てきた配信を、
深く考えずにタップした。

📻 作楪
「こんばんはー。
今日もゲーム雑談、ゆるくやってくよ~」
低くて、
でも、押しつけがましくない声。
お母さんのような、そんな理由はないけど安心する声だった。
コメント欄が流れている。

——この人、人気なんだ。

イヤホンを耳に入れる。
「今日のちょこっと心に突き刺さるお話はねぇ~、
“にじみ色”」

七星は、
思わず、画面を見た。

「誰かと仲良くなろうとして、
何も間違ってないのに、
ちょっとだけ、心が痛くなる日」

胸が、
小さく鳴った。

「それはね、
君が悪いんじゃない」

作楪は、
ゆっくり続ける。
「ただ、
誰かの大事な色に、
触れてしまっただけかもしれない」

——あ。

今日の教室が、
頭に浮かぶ。

スケッチブック。
二人の空気。
自分が、声をかけなかった理由。

「だから、
優しくするなら、
自分にも、優しくしてあげて」

七星は、
息を吐いた。

知らない人の声なのに、
なぜか、
許された気がした。

コメント欄に、
そっと打つ。
「初見です。
今日の話、好きです」
すぐに、
作楪の声が返ってきた。
「来てくれてありがとう。
大丈夫、そのままで」

スマホの画面が、
少しだけ、滲んだ。
作楪色に染まった瞬間だった。

——私も、
同じ声を聴いてる。

芽衣子も。
雪も。
そのことを、
この時は、
まだ知らなかった。
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