スケッチブック
📻 作楪

夜更けの配信は、
いつもより人が少なかった。
ゲームの音を下げて、
作楪は、少しだけ間を置く。

「今日はさ……
占いっていうより、
独り言みたいな話していい?」

コメントが流れる。

「若い頃の話?」

作楪は、
ふぅっと小さく笑った。

「若い、ってほどでもないけどね。
でも、
ずっと前の話」

画面の向こうで、
誰かがイヤホンを外し、
誰かが、
ぎゅっと耳に押し当てる。

「学生の頃ってさ、
好きって言葉を使うには、
世界が狭すぎるんだよ」

「だから、
描いたり、
黙ったり、
優しくしたりする」

作楪は、
何かを思い出すように、
一拍、置いた。
ぽつりぽつりと言葉を落としていく…
波紋が広がっていく…

「その全部が、
ちゃんと、恋だった」


コメント欄が、
少しだけ静かになる。

「私がどうして、
こういう話を知ってるかって?」

少し照れたように、
息を吐く。

「たぶんね……
同じスケッチブックを、
持ってたから」

それ以上は、
言わなかった。

ゲーム画面に、
また音が戻る。

「今日はここまで。
来てくれて、ありがとう」
配信終了の音。
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