ほたる
「蛍狩りに行こう」
 友達にそう言われてもボクは気が進まなかった。

 ──蛍は人の身体から抜け出した魂なんだよ。
 ──だから墓場やその近くの川によく飛んでいるんだ。

 そんな事をばあちゃんに言われた事があるからだろう。ボクは断った。
 しかし弟がどうしても行きたいという。
 ボクは仕方がなく
「見るだけだぞ。捕まえちゃダメだからな」といい、蛍狩りならぬ蛍見に行った。
 川の蛍は妖しく、美しかった。

 帰り道、弟の薄手のパーカーのポケットが淡く光っているのに気がついた。
 あれほど言ったのに、こっそり捕まえてポケットに入れていたようだ。
 ボクは約束をやぶるならもう一緒に遊ばないといい、弟に蛍を放させた。

 弟はむくれたが、約束は約束だ。

 帰宅すると、夕ご飯の用意が出来ていた。
 ボクらの気配に気がついたのか、ちゃぶ台の側で寝ていたじいちゃんがパチリと目をあけてボクに言った。

 ──ありがとうな。さっきは助かったわ。

……………………………………………………………………………………
【解説】

小学生の「ボク」の弟が捕まえたのは三途の川を渡りかけていた実のおじいちゃんの魂だったようです。
彼らがおばあちゃんの言いつけを守らなかったら……?

一体どうなっていたのでしょうね。

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