悪女と罵られたので退場させていただきます!

3.政略結婚1

 結局のところ、これは一種の政略結婚に過ぎなかった。
 帝国貴族になって六年。
 六年の月日を早いと取るか、遅いと取るかは人それぞれ。

「お父様の意図もイマイチよく分からないし……」

 何しろ、父は「三年で良い。三年、後宮にいてくれさえすれば良いんだ」とのこと。
 何が良いのかサッパリです。ニュアンス的には三年後に後宮から出られるような言い方をされ、「それはどういう意味?」と頭の中がクエスチョンマークで埋め尽くされたくらいです。

「白い結婚を貫けという意味かしら?」

 お飾りの妃でいたところで後宮から出られるとは限らない。そもそも皇太子夫妻が離婚など出来るものかしら?前例がなくはないけれど……。果たしてソレが私に通用するものなのか……甚だ疑問でしかなく。
 もしかすると父と陛下の間で何らかの密約を交わしているのかも。
 …………たとえ、そうだとしても。
 お二人は、女の三年間を何だと思っているのか。
 貴族令嬢の三年は長い。
 後宮を去ることが出来たとしても問題はその後。
 私が幾つになっているのか理解していないのかしら?それ以前に、元皇太子妃に再婚は許されるのかしら?
 …………分からない。本当に分からないわ。お父様達の考えが。私に子供が出来なかった場合、公爵はどうなるのかしら?爵位返上?まあ、皇帝陛下に返上したところで帝国には大して問題はないのかもしれないけれど。

「はぁ……」

 私は溜息をつき、茶器をテーブルへと置く。
 人払いをしているとはいえ、ここは後宮。
 そもそも部屋の端にはメイドが控えているので決して一人になることはない。当然といえば当然なのだけれど。
 皇太子の後宮。
 そこに住まう妃達は一人と男性(皇太子)の寵愛を巡って競い合うもの。
 正妃として嫁いできたとはいえ、私もその争いに嫌でも巻き込まれるのでしょうね。
 今のところは特に何もないけれど、それも時間の問題。
 嫁いで三日目というのもあるでしょうし……。
 いいえ、問題はソレではないわね。
 問題は、皇太子の御渡りがないこと。
 初夜にさえ訪れない皇太子殿下。
 普通ならばあり得ないこと。
 だけど……。

「私だけ、の話じゃないものね」

 後宮の妃達。
 皇太子殿下はその誰とも閨を共にしない。

「表立っては言えないわよね」

 後宮についてもそうだけれど、皇太子殿下のあれやこれやの話についても……。
 嫁ぐ前日に父から聞いた皇太子殿下の過去の出来事。

「事前に聞かされてたとはいえ、ね」

 もう少し早く話して欲しかったわ。
 お父様は、私に言うかどうか悩んでいたようだけど……。
 正妃なら知っておくべき、と伝えることを決めたようで……。

「お飾りの妃が一人や二人増えたところで……ってことかしら」

 少なくとも皇太子殿下にとって正妃も側妃も大して違いはなく。
 私としては「名ばかりの皇太子妃」と薄々感づいてはいたけれど、まさか他の妃達のソウだとは想像もしなかったのです。


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