悪女と罵られたので退場させていただきます!
10.皇太子side
『妃達の妊娠しやすい周期はきちんと知っておくべきです』
絶句。
何だそれは。
『ただでさえ、後宮という場所はストレスが溜まる場所です。上手く発散できない、もしくはストレスの捌け口がない妃達も中にはいるはずです。そういう女性は生理不順や無月経になることが多いです。あら?もしかすると既にそうなっている妃もいるかもしれませんね。今後のことを考えれば、今の内に後宮の管理体制を整えるべきです』
そこから更に話はとんでもない方向に発展していったように思える。
何故、そう思うのかというと、私の意識が途中から朦朧として、いまいち覚えていないからだ。
ただ、覚えている事はある。
『後宮の管理体制を整えるのは良いですが、妃達全員の周期を把握するのは難しいかと思います。中にはそういうことをされるのを嫌がる方もいらっしゃいます』
『確かにそうですね。大半の女性は嫌がるかもしれませんが、そこは側妃としての義務だと認識して、納得してもらうしかありません』
そんな会話をしていた気がする。
ブランシュの勢いに押されっぱなしの侍従がやけに印象に残っていた。
「あの後、どうなったんだ」
いや、今考えるのはよそう。
明日、侍従に聞けばいい。
「……寝よう」
考えれば考えるほど深みにはまる気がする。
そう結論付けた私は、静かに目を閉じたのだった。
翌日、侍従に話を聞いた。
彼の尽力で「妃達の管理」については、一旦、取り止めになった。
「よく、彼女を説得させられたな」
昨日の様子からして、ブランシュが簡単に納得したとは到底思えなかった。
「殿下、妃の周期管理の提案は実に合理的ですが、妃達の精神衛生を考えますと、非常に負担が大きいかと。精神衛生上よろしくないと判断しました」
「そうか」
「それに後宮の管理体制についてですが、側妃様方の御実家から横槍が入る可能性があります」
「……そうだな」
侍従の言葉に私は頷くしかなかった。
「それにしても皇太子妃殿下は聡明でいらっしゃいます」
「ああ」
「後宮の内部情報もいつの間にか入手されていました。妃達の月のモノの記録まで調べられました」
「待て。いくら何でもそれは……」
無理だろう、という言葉は出なかった。
「後宮内の下女を始めとする下働きの者達からの聞き取りによって情報を得ていたようです」
「し、下働きからの情報……?」
「はい。妃殿下曰く、『下働きの使用人は何かと口が軽い。それは後宮においても一緒だ』と、言っておりました。袖の下を通せば更に話してくれたと」
「そ、袖の下……」
「金品のことです」
「いや、それは分かっているが……」
いくら下働きとはいえ、後宮勤めの者達がそう簡単に口を割るだろうか。
私の疑問を察してか、侍従は口を開く。
「上級の使用人は口が堅いので、下の使用人達も同様だと考えていたのですがすが、それは間違いだったようです」
「どういうことだ?」
「貴族出身ばかりの使用人は家の名前を背負っていますので、金品で簡単に口を割ることはありません。ですが、平民が大多数の使用人はそうではなかったようです」
「……」
「全員がそうという訳ではありませんが、中には生活に困っている下働きもいるようです」
「給料はだしているだろう。足りなというのか?」
「普通なら何も問題のない金額です。後宮勤めは下働きの中でも高給取りに値します。もちろん、平民の金銭感覚から、という意味にはなりますが。ですが、家族が大病を患ったとか、借金の返済に追われているなど、生活が逼迫している者達にとっては、後宮で貰える給金では足りないようです」
「……」
それはつまり……。
「妃殿下は、そういった事情を汲み取って、情報を得たようです。とはいえ、それだけが理由でもないのですが……」
「どういうことだ?」
「側妃様方の評判が悪かったのも理由のひとつです」
「……なんだって?」
初耳だった。
評判が悪い?
確かに中には性格の悪い者もいるだろう。
時たま聞こえてくる噂には、そこまで悪い噂はなかったはずだ。
「表面上は『優しい妃』として通っている方でも裏は違うということでしょう」
なるほど。
つまり、情報を金で取引しても大して罪悪感などわかない、という訳か。
後宮の妃達は私が思っていた以上に人望がないらしい。
絶句。
何だそれは。
『ただでさえ、後宮という場所はストレスが溜まる場所です。上手く発散できない、もしくはストレスの捌け口がない妃達も中にはいるはずです。そういう女性は生理不順や無月経になることが多いです。あら?もしかすると既にそうなっている妃もいるかもしれませんね。今後のことを考えれば、今の内に後宮の管理体制を整えるべきです』
そこから更に話はとんでもない方向に発展していったように思える。
何故、そう思うのかというと、私の意識が途中から朦朧として、いまいち覚えていないからだ。
ただ、覚えている事はある。
『後宮の管理体制を整えるのは良いですが、妃達全員の周期を把握するのは難しいかと思います。中にはそういうことをされるのを嫌がる方もいらっしゃいます』
『確かにそうですね。大半の女性は嫌がるかもしれませんが、そこは側妃としての義務だと認識して、納得してもらうしかありません』
そんな会話をしていた気がする。
ブランシュの勢いに押されっぱなしの侍従がやけに印象に残っていた。
「あの後、どうなったんだ」
いや、今考えるのはよそう。
明日、侍従に聞けばいい。
「……寝よう」
考えれば考えるほど深みにはまる気がする。
そう結論付けた私は、静かに目を閉じたのだった。
翌日、侍従に話を聞いた。
彼の尽力で「妃達の管理」については、一旦、取り止めになった。
「よく、彼女を説得させられたな」
昨日の様子からして、ブランシュが簡単に納得したとは到底思えなかった。
「殿下、妃の周期管理の提案は実に合理的ですが、妃達の精神衛生を考えますと、非常に負担が大きいかと。精神衛生上よろしくないと判断しました」
「そうか」
「それに後宮の管理体制についてですが、側妃様方の御実家から横槍が入る可能性があります」
「……そうだな」
侍従の言葉に私は頷くしかなかった。
「それにしても皇太子妃殿下は聡明でいらっしゃいます」
「ああ」
「後宮の内部情報もいつの間にか入手されていました。妃達の月のモノの記録まで調べられました」
「待て。いくら何でもそれは……」
無理だろう、という言葉は出なかった。
「後宮内の下女を始めとする下働きの者達からの聞き取りによって情報を得ていたようです」
「し、下働きからの情報……?」
「はい。妃殿下曰く、『下働きの使用人は何かと口が軽い。それは後宮においても一緒だ』と、言っておりました。袖の下を通せば更に話してくれたと」
「そ、袖の下……」
「金品のことです」
「いや、それは分かっているが……」
いくら下働きとはいえ、後宮勤めの者達がそう簡単に口を割るだろうか。
私の疑問を察してか、侍従は口を開く。
「上級の使用人は口が堅いので、下の使用人達も同様だと考えていたのですがすが、それは間違いだったようです」
「どういうことだ?」
「貴族出身ばかりの使用人は家の名前を背負っていますので、金品で簡単に口を割ることはありません。ですが、平民が大多数の使用人はそうではなかったようです」
「……」
「全員がそうという訳ではありませんが、中には生活に困っている下働きもいるようです」
「給料はだしているだろう。足りなというのか?」
「普通なら何も問題のない金額です。後宮勤めは下働きの中でも高給取りに値します。もちろん、平民の金銭感覚から、という意味にはなりますが。ですが、家族が大病を患ったとか、借金の返済に追われているなど、生活が逼迫している者達にとっては、後宮で貰える給金では足りないようです」
「……」
それはつまり……。
「妃殿下は、そういった事情を汲み取って、情報を得たようです。とはいえ、それだけが理由でもないのですが……」
「どういうことだ?」
「側妃様方の評判が悪かったのも理由のひとつです」
「……なんだって?」
初耳だった。
評判が悪い?
確かに中には性格の悪い者もいるだろう。
時たま聞こえてくる噂には、そこまで悪い噂はなかったはずだ。
「表面上は『優しい妃』として通っている方でも裏は違うということでしょう」
なるほど。
つまり、情報を金で取引しても大して罪悪感などわかない、という訳か。
後宮の妃達は私が思っていた以上に人望がないらしい。