悪女と罵られたので退場させていただきます!
12.ヴァレリー公爵(父)side
【お父様。
私が嫁いでから、いかがお過ごしでしょうか。
変わらずご健勝にてお過ごしのことと存じます。
さて、突然の手紙にて失礼いたします。
本日は、皇太子殿下とのご関係について、少々思い悩むことがあり、お父様のお知恵をお借りしたく、筆を執りました。
以前お伝えした通り、殿下との関係は穏やかに保たれております。
しかし、数日前に夜伽や世継ぎに関する話題を交わして以来、殿下は私の部屋を訪れなくなりました。
侍従によれば「殿下は繊細な方」とのことですが、そのご様子から、単なる気質を超えたもののように感じられます。
殿下の周囲の者達に至っては、過保護とも言える振る舞いを見せており、それが私には、何かを隠しているように思えてなりません。
また、侍従は「殿下は人見知りで、特に女性に対して強い苦手意識をお持ちです」とも申しておりました。
私自身、殿下との交流が物理的な距離を保つことで成り立っていることは理解しております。
けれども、そのご様子は、単なる人見知りを超えた、深い緊張や恐れを伴うもののように思われます。
もしかすると、殿下は女性に対して特別な恐れを抱いておられるのではないかと、私なりに推察しております。
お父様におかれましては、殿下のご事情について何かご存じのことがございましたら、どうかお教えいただけませんでしょうか。
私としては、殿下との関係を良好に保ち、皇室の安寧に寄与したいと心より願っております。
ご多忙の折とは存じますが、何卒ご助言賜りますようお願い申し上げます。
娘より】
屋敷で、ブランシュからの手紙を読み終えたとき、私はしばし言葉を失っていた。
「夜伽と世継ぎ……」
皇太子にとっては、触れてはならぬ話題だ。
知らなかったとはいえ、我が娘ながら、なかなか大胆な問いを投げかけたものだ。
いや、知らなかったからこそ、真っ直ぐに口にできたのだろう。
それが、殿下の心を閉ざすきっかけになったとしても、不思議ではない。
私は机に肘をつき、そっと目を閉じた。
ブランシュの勘は鋭い。
皇太子殿下が「女性を恐れる」のは事実だ。
それは殿下の過去が関係している。
ブランシュは無意識のうちに、殿下が最も触れられたくない部分に踏み込んでしまった。
だが、ブランシュは皇太子妃。
夜伽も世継ぎも、避けては通れぬ事柄だ。
それを見過ごさず、正面から問いかけたのは、娘なりの責任感の表れだろう。
「何も間違ってはいない」
皇太子妃として、当然の行動を取ったまでのこと。
だからこそ、誰もブランシュに忠告できないのだ。
殿下の侍従達も、それを理解しているからこそ、苦言を呈することもできずにいるのだろう。
私は静かに筆を取り、娘への返事を書き始めた。
言葉を選びながら、慎重に。
私が嫁いでから、いかがお過ごしでしょうか。
変わらずご健勝にてお過ごしのことと存じます。
さて、突然の手紙にて失礼いたします。
本日は、皇太子殿下とのご関係について、少々思い悩むことがあり、お父様のお知恵をお借りしたく、筆を執りました。
以前お伝えした通り、殿下との関係は穏やかに保たれております。
しかし、数日前に夜伽や世継ぎに関する話題を交わして以来、殿下は私の部屋を訪れなくなりました。
侍従によれば「殿下は繊細な方」とのことですが、そのご様子から、単なる気質を超えたもののように感じられます。
殿下の周囲の者達に至っては、過保護とも言える振る舞いを見せており、それが私には、何かを隠しているように思えてなりません。
また、侍従は「殿下は人見知りで、特に女性に対して強い苦手意識をお持ちです」とも申しておりました。
私自身、殿下との交流が物理的な距離を保つことで成り立っていることは理解しております。
けれども、そのご様子は、単なる人見知りを超えた、深い緊張や恐れを伴うもののように思われます。
もしかすると、殿下は女性に対して特別な恐れを抱いておられるのではないかと、私なりに推察しております。
お父様におかれましては、殿下のご事情について何かご存じのことがございましたら、どうかお教えいただけませんでしょうか。
私としては、殿下との関係を良好に保ち、皇室の安寧に寄与したいと心より願っております。
ご多忙の折とは存じますが、何卒ご助言賜りますようお願い申し上げます。
娘より】
屋敷で、ブランシュからの手紙を読み終えたとき、私はしばし言葉を失っていた。
「夜伽と世継ぎ……」
皇太子にとっては、触れてはならぬ話題だ。
知らなかったとはいえ、我が娘ながら、なかなか大胆な問いを投げかけたものだ。
いや、知らなかったからこそ、真っ直ぐに口にできたのだろう。
それが、殿下の心を閉ざすきっかけになったとしても、不思議ではない。
私は机に肘をつき、そっと目を閉じた。
ブランシュの勘は鋭い。
皇太子殿下が「女性を恐れる」のは事実だ。
それは殿下の過去が関係している。
ブランシュは無意識のうちに、殿下が最も触れられたくない部分に踏み込んでしまった。
だが、ブランシュは皇太子妃。
夜伽も世継ぎも、避けては通れぬ事柄だ。
それを見過ごさず、正面から問いかけたのは、娘なりの責任感の表れだろう。
「何も間違ってはいない」
皇太子妃として、当然の行動を取ったまでのこと。
だからこそ、誰もブランシュに忠告できないのだ。
殿下の侍従達も、それを理解しているからこそ、苦言を呈することもできずにいるのだろう。
私は静かに筆を取り、娘への返事を書き始めた。
言葉を選びながら、慎重に。