悪女と罵られたので退場させていただきます!

14.皇太子side

 その日、悪夢を見た。

 ぐちゃ……ぬちゃ……。

 気持ち悪い。何の音だ?粘着質な音が耳にこびりつく。
 体を動かそうにも指一本動かす事ができなかった。手足を拘束されている訳ではない。なのに金縛りにあったかのように動かないのだ。まるで見えない鎖で縛られているような感覚に恐怖を覚えた。

「んぅ……はっ、はっ」

 瞼が開かない。口を動かす事はできるようだ。息も苦しくはないから呼吸はしているのだろう。声を出す事は叶わない。声を出そうとしても掠れた空気が漏れるだけ。
 一体私の身になにが起こってるんだ!?

「……っ!」

 動かない体。
 なのに暑い。身体中どこよりも下半身が熱を持っていた。熱くて痛いくらいだった。しかし同時に心地よさもあった。自分の意思とは関係ないナニカ。全身がべたべたしているのが解る。汗だくで酷く気怠い。なのにどこかふわふわとした高揚感がある。そして聞こえるあの水音と吐息のような喘ぎ声。
 なんだ……これは……。
 誰かが自分の上にいる!
 ぐちゅりと湿った音を立ててそれは動き出す。最初はゆっくり動いていたが次第に激しくなっていった。
 誰か助けて……。
 涙を流すことも出来ず心の中で何度も助けを求めるがそれが届くことはない。

「あ、ぁ……っう……」

 ビクビクッ!!体が痙攣し一気に脱力する。
 朦朧とする意識で、なんとか瞼を開けることに成功した。
 ぼやけた視界の中にいた数人の女達。
 ぼやけて顔が見えない。
 だが、女達が代わる代わる私の上に覆いかぶさっている。
 気持ち悪い。
 女達は笑っている。
 その姿は何よりも醜かった。
 おぞましい化け物にしか見えなかった。
 夢ならば早く覚めてくれ!

「う……」

 そこで目が覚めた。
 はぁはぁ……っと息が荒い。心臓が早鐘を打っている。額には汗が滲み、体はびっしょりと濡れていた。
 私は……。
 例の事件は終わった事だ。
 今更、こんな夢を見るなど……。
 震える体を自分自身で抱きしめるしかなかった。
 ……嫌だ。
 怖い、苦しい、辛い……。

「ふぅー……ふぅー……」

 呼吸も上手くできなかった。息を吸ってるのに息苦しい。涙が出てきた。視界が歪み、体に力が入らない。あのことが脳裏を過ぎる度に息が詰まりそうになる。

「う、ぅ……ひっく」

 嗚咽が漏れた。私の意思とは関係無しに目頭が熱くなる。
 まるで小さな子供だ。
 私は酷く弱い。
 誰かに傍にいて欲しい。抱きしめて欲しい。大丈夫だ、と声をかけて欲しい。
 だが、その反面、誰にも傍にいて欲しくないとさえ思ってしまう。
 私は……私は……。
 悪夢はまだ終わらない。


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