悪女と罵られたので退場させていただきます!
17.皇太子side
『漸く目覚めたか。待ちかねたぞ』
意識が戻った私の前にいたのは、陛下だった。
『なかなか目覚めぬから肝を冷やしたぞ。このまま目が覚めぬようでは困るからな』
陛下は憎まれ口を叩きながら、表情はとても優しいものだった。
皇帝としてではなく、祖父として接してくれる。
『その、心労をお掛けして申し訳ありませんでした……』
謝罪する私に、陛下は『よいよい』と微笑みながら言ってくれた。
医師の診察を受け、容態に関しては問題がないと診断された。
ただ、襲われたショックで、女性恐怖症に罹ってしまった。
女性を見ると嘔吐を繰り返すようになってしまったのだ。
その旨は陛下にも伝えられ、陛下は私の心情を察してくれた。
私の居住区域に女性を一切入れないようにしてくれたのだ。
『……陛下、私はもう大丈夫です』
私は陛下にそう言ったが、陛下は首を横に振った。
『いや、無理をするな』
『ですが……』
『今はゆっくり身体を休めることだけを考えよ』
『……ありがとうございます』
陛下の優しい気遣いが、有り難かった。
この時、私はまだ知らなかった。
私の身体の変化を。
女性達に飲まされた薬の影響で生殖能力が極端に落ちてしまい、子を望むのは今後難しくなってしまったことを。
『皇太子殿下、投薬治療を始めてみませんか』
『投薬治療?』
私にそう話しかけてきたのは、侍医だ。
彼は皇室の主治医として長年勤めており、信頼のおける人物だった。
その彼が私に投薬治療を提案してきたのだ。
投与治療で男性の機能を回復させようというのだ。
『長期的な治療になりますが、効果は保証致します』
『……そうか。よろしく頼む』
『はい』
投薬治療を開始してから半年後。
私は主治医の提案通りに投薬治療を行った結果だろう。
男性機能は回復傾向にあった。
だから、という訳ではないのだろうが、侍医は私にカウンセラーを勧めてきた。
侍医が勧める理由はよく分かる。
このまま一生女性と会わない生活を送ることは無理だ。
克服する為にもカウンセラーとの面談は必要なことだと思った。
『今後のためにも必要かと思います』
侍医から紹介された精神科医は男性医師。
彼はとても穏やかな雰囲気を持つ医師で、私の話を親身に聞いてくれた。
カウンセリングを受けて、少しずつではあるが、女性に対する恐怖心や不安感は和らいでいる……ように思う。
パニック発作も以前より減っている。
それでも女が近くにいるだけで嫌悪感は拭えない。
『こればかりは時間が必要ですね。焦らずゆっくりと治療していくしかありません』
焦りは禁物だと、精神科医は何度も言う。
自分でも気長に治療をしなければと思っている。
頭では理解していても気持ちは別だったのだろう。無意識の内に行動に表れていたらしく、そのことを指摘されて初めて知った。
『気付かなかった』
ポツリと呟いた私に精神科医は『無理もないことです』と、慰めてくれた。
『殿下、貴方は今、大切な時期なのです。心身ともに健康になられるよう、治療を続けていきましょう』
精神科医の言葉に私は頷いたのだった。
二年後、普通の生活ができるまで回復した。
ただし、それは女性との距離があればの話だ。
遠目で見る分には以前のようにパニック発作を起こすことはないが、近付いて触れられると嫌悪感と拒絶反応が出てしまう。
嘔吐することはなくなったが、未だに女に対する恐怖心は拭えないでいる。
私を襲った女性達のその後は知らない。
懐妊したのかどうかすら知らない。
昏睡状態の私を看護していた侍女達は配置換えになったらしい。
「ここだけの話」と称して、私の部屋であれだけの会話をしていたのだ。配置換えがどこまで本当なのかは不明だった。
もしかすると何らかの罰を受けたのかもしれない。
私に起きた出来事は一種のタブーと化している。それを軽々しく口にする者達にはそれなりの処置が取られるのも当然だった。
配置換えになった彼女達のその後を知ろうとは思わなかった。知る必要のないことだ。
こうして悪夢の様な日々は幕を閉じた。
ただ一つ、女性に触れられないという後遺症を残して。
意識が戻った私の前にいたのは、陛下だった。
『なかなか目覚めぬから肝を冷やしたぞ。このまま目が覚めぬようでは困るからな』
陛下は憎まれ口を叩きながら、表情はとても優しいものだった。
皇帝としてではなく、祖父として接してくれる。
『その、心労をお掛けして申し訳ありませんでした……』
謝罪する私に、陛下は『よいよい』と微笑みながら言ってくれた。
医師の診察を受け、容態に関しては問題がないと診断された。
ただ、襲われたショックで、女性恐怖症に罹ってしまった。
女性を見ると嘔吐を繰り返すようになってしまったのだ。
その旨は陛下にも伝えられ、陛下は私の心情を察してくれた。
私の居住区域に女性を一切入れないようにしてくれたのだ。
『……陛下、私はもう大丈夫です』
私は陛下にそう言ったが、陛下は首を横に振った。
『いや、無理をするな』
『ですが……』
『今はゆっくり身体を休めることだけを考えよ』
『……ありがとうございます』
陛下の優しい気遣いが、有り難かった。
この時、私はまだ知らなかった。
私の身体の変化を。
女性達に飲まされた薬の影響で生殖能力が極端に落ちてしまい、子を望むのは今後難しくなってしまったことを。
『皇太子殿下、投薬治療を始めてみませんか』
『投薬治療?』
私にそう話しかけてきたのは、侍医だ。
彼は皇室の主治医として長年勤めており、信頼のおける人物だった。
その彼が私に投薬治療を提案してきたのだ。
投与治療で男性の機能を回復させようというのだ。
『長期的な治療になりますが、効果は保証致します』
『……そうか。よろしく頼む』
『はい』
投薬治療を開始してから半年後。
私は主治医の提案通りに投薬治療を行った結果だろう。
男性機能は回復傾向にあった。
だから、という訳ではないのだろうが、侍医は私にカウンセラーを勧めてきた。
侍医が勧める理由はよく分かる。
このまま一生女性と会わない生活を送ることは無理だ。
克服する為にもカウンセラーとの面談は必要なことだと思った。
『今後のためにも必要かと思います』
侍医から紹介された精神科医は男性医師。
彼はとても穏やかな雰囲気を持つ医師で、私の話を親身に聞いてくれた。
カウンセリングを受けて、少しずつではあるが、女性に対する恐怖心や不安感は和らいでいる……ように思う。
パニック発作も以前より減っている。
それでも女が近くにいるだけで嫌悪感は拭えない。
『こればかりは時間が必要ですね。焦らずゆっくりと治療していくしかありません』
焦りは禁物だと、精神科医は何度も言う。
自分でも気長に治療をしなければと思っている。
頭では理解していても気持ちは別だったのだろう。無意識の内に行動に表れていたらしく、そのことを指摘されて初めて知った。
『気付かなかった』
ポツリと呟いた私に精神科医は『無理もないことです』と、慰めてくれた。
『殿下、貴方は今、大切な時期なのです。心身ともに健康になられるよう、治療を続けていきましょう』
精神科医の言葉に私は頷いたのだった。
二年後、普通の生活ができるまで回復した。
ただし、それは女性との距離があればの話だ。
遠目で見る分には以前のようにパニック発作を起こすことはないが、近付いて触れられると嫌悪感と拒絶反応が出てしまう。
嘔吐することはなくなったが、未だに女に対する恐怖心は拭えないでいる。
私を襲った女性達のその後は知らない。
懐妊したのかどうかすら知らない。
昏睡状態の私を看護していた侍女達は配置換えになったらしい。
「ここだけの話」と称して、私の部屋であれだけの会話をしていたのだ。配置換えがどこまで本当なのかは不明だった。
もしかすると何らかの罰を受けたのかもしれない。
私に起きた出来事は一種のタブーと化している。それを軽々しく口にする者達にはそれなりの処置が取られるのも当然だった。
配置換えになった彼女達のその後を知ろうとは思わなかった。知る必要のないことだ。
こうして悪夢の様な日々は幕を閉じた。
ただ一つ、女性に触れられないという後遺症を残して。