悪女と罵られたので退場させていただきます!
19.義弟side
生家の子爵家につくと実父から殴られた。そして母と兄たちから罵声を浴びせられた。
「お前は何てことをしたんだ!!」
「ブランシュ様を陥れるとは……お前は自分の立場を理解していないのか?!」
「ブランシュ様が王太子妃になるからこその養子縁組だったんだ!!それを……それを……」
怒りに顔を歪める両親や兄弟たちを前にして何も言えなかった。
後から知った事だが、僕は公爵家と養子縁組を正式に執り行われていなかった。なんでも、義姉が嫁いで世継ぎを産むということが前提の話だったため正式な書類を交わしていなかったそうだ。交わしたのは仮契約だった。
ははっ。
僕はそんな事も知らずに公爵家の子息だと自惚れていた。
そもそも僕は中継ぎでしかなく、王太子と義姉が結婚して第二子が授かればその子供が正式な跡取りなのだと兄から説明された。
なんだそれは。
僕は知らなかった。
きっとそれが顔に出ていたのだろう。
「公爵家で説明を受けなかったのか?」
「色々と言われた気はするけど……」
「子供ながら頭の良さを買われたんだ」
「それは知っていたよ。だけどまさか中継ぎだったなんて……」
「当たり前だろう。直系の総領姫であるブランシュ様がいるんだ。彼女の子供が公爵家を継ぐ。そういう約束で王太子殿下の婚約者になったんだ」
「義姉……「ブランシュ様だ」……ブランシュ様が王太子殿下と結婚したいといったんじゃないの?」
「はっ?! 誰がそんなバカげたことを言ったんだ!!?」
「ち、違うの?」
「当たり前だろう!! 王妃殿下の実家はしがない伯爵家だ。後見人とは名ばかりのな!! だからこそ王家が公爵家に頼み込んでブランシュ様を婚約者にしてもらったんじゃないか!!! そうでなければブランシュ様が王家に嫁ぐ訳がないだろう!!! 後ろ盾の弱い王太子殿下はブランシュ様と婚約したからこそ今の地位があるんだ!!!」
嘘だろう?
王太子殿下の話と違う。
義姉に付きまとわれて困っていると。
義姉が王太子殿下に惚れ込んでいると。
「はぁ……ま、その様子じゃあ、知らなかったみたいだな。お前が誰に唆されたのかも何となくだが分かった」
溜息交じりに吐かれた兄の言葉は冷たく響いた。
失望した目で見てくる両親よりも、兄の呆れた目が僕にとっては一番堪えた。
前提条件を最初から間違えていたのは僕だった。
「我が娘との婚約を白紙にしていただきたい」
婚約者の父親が子爵家に来て早々言い放ったのは「婚約の白紙」だった。
両親は卒倒しかけ、兄は目を伏せた。
「ど、どういうことでしょうか?」
「おや?わざわざ説明をしなければ分からないのかね」
「一方的過ぎると申しているんです」
「ほぉ?一方的と」
嘲笑う笑みには怒りがます。
だってそうだろ?
こんな一方的な宣言はない。
両親や兄が言えないなら僕が話をするしかない。
「はい。幾らなんでも『婚約解消してくれ』と申されて『はい』と黙って従う者はおりません。理由を仰ってくださらなければ承諾できません」
「なんとまぁ……聞きしに勝る愚かさだな」
「なっ!? し、失礼です!!」
「失礼なのは君の方だ。たかだか子爵家の若造が侯爵家に楯突くという意味を理解できていないのかね」
「横暴な!!家格が上なら何をしても許されると思っているのですか!!?」
「これは面白い。王家という立場を利用して公爵令嬢を貶めた首謀者の一人が何を言っているのか。それとも何かね?自分達は理不尽な事をしても許され、他者にされる事は許さないとでも?まさに道理の通らない話ではないか」
「そ、それは……」
「最初に言っておくが、私が先のない公爵家の猶子である君と娘の婚約を認めたのはヴァレリー公爵家との繋がりを求めた結果だ。それを失った男に用はない。しかも直系の令嬢を罠に嵌め、格上の王家まで巻き込んで公爵家を乗っ取ろうと企むなど言語道断だ!そんな男と娘を結婚させれば我が侯爵家も君達に乗っ取られかねない。それ故に婚約を白紙にするのだ。こちらとしては『婚約解消』でも構わん。その場合、御家乗っ取り計画を家族ぐるみで行おうとしていたと裁判所に訴えるまでだ」
「乗っ取り!?」
何を言われたのか理解できなかった。
そんなこと考えた事がなかったからだ。
「ああ、もしかして君は自分の行動がどういう結果に繋がるのか理解できていないようだ。君を含めた仲良しグループは、ヴァレリー公爵家の乗っ取りを企んだとの噂だ。もっとも噂ではなく事実だがな」
「そんな!!」
「これは子爵夫妻も御存知なかったようだ。まぁ、社交界に顔をだしていないのであれば無理ない話だが」
確かに僕たちは社交に参加していない。というか、僕の事があってできなかった。
それがなぜこんな事になるなんて。
僕が呆然としている間に話は進む。
そして気付いた時には侯爵令嬢との婚約は無かった事になっていた。
それから一年余り後――――
あの日から僕の生活は大きく変わった。
まず両親は離婚。
僕は母に引き取られる事となった。
一時は母の実家である男爵家に身を寄せてはいた。
伯父はそうでもなかったが従兄妹達の僕を見る目は厳しい。厄介者がきた、といったところだろう。
母は伯父の勧めで商人と再婚した。
最初は平民の男との結婚に難色を示した僕だったけど、「再婚相手がいるだけマシだわ」と言う母の言葉に黙るしかなかった。相手の男性は母の幼馴染で、母の事情を全てしった上で結婚をしてくれた。
『この国に住み続けるのは君たちのためにならないと思うんだ。私の店は隣国に本店をおいているから、そちらに行こう』
彼は僕たち母子のために隣国に移住を促してくれた。
『大丈夫。私がついている』
優しく笑う彼に僕は心の中で感謝する事しかできなかった。
彼は僕に大学進学を勧めてくれた。
卒業後に彼の商会に勤務した。
その頃には歳の離れた弟ができていた。
『まさかこの歳で子供ができるなんて』
母だけでなく、彼も驚いていた。因みに僕も驚いた。
小さな弟はとても可愛いかった。目に入れても痛くないとはこのことか。その後も必死に働き、二年後には商会を継いだ。その二十年後に正式な跡取りである異父弟に跡を譲ったのだった。
「お前は何てことをしたんだ!!」
「ブランシュ様を陥れるとは……お前は自分の立場を理解していないのか?!」
「ブランシュ様が王太子妃になるからこその養子縁組だったんだ!!それを……それを……」
怒りに顔を歪める両親や兄弟たちを前にして何も言えなかった。
後から知った事だが、僕は公爵家と養子縁組を正式に執り行われていなかった。なんでも、義姉が嫁いで世継ぎを産むということが前提の話だったため正式な書類を交わしていなかったそうだ。交わしたのは仮契約だった。
ははっ。
僕はそんな事も知らずに公爵家の子息だと自惚れていた。
そもそも僕は中継ぎでしかなく、王太子と義姉が結婚して第二子が授かればその子供が正式な跡取りなのだと兄から説明された。
なんだそれは。
僕は知らなかった。
きっとそれが顔に出ていたのだろう。
「公爵家で説明を受けなかったのか?」
「色々と言われた気はするけど……」
「子供ながら頭の良さを買われたんだ」
「それは知っていたよ。だけどまさか中継ぎだったなんて……」
「当たり前だろう。直系の総領姫であるブランシュ様がいるんだ。彼女の子供が公爵家を継ぐ。そういう約束で王太子殿下の婚約者になったんだ」
「義姉……「ブランシュ様だ」……ブランシュ様が王太子殿下と結婚したいといったんじゃないの?」
「はっ?! 誰がそんなバカげたことを言ったんだ!!?」
「ち、違うの?」
「当たり前だろう!! 王妃殿下の実家はしがない伯爵家だ。後見人とは名ばかりのな!! だからこそ王家が公爵家に頼み込んでブランシュ様を婚約者にしてもらったんじゃないか!!! そうでなければブランシュ様が王家に嫁ぐ訳がないだろう!!! 後ろ盾の弱い王太子殿下はブランシュ様と婚約したからこそ今の地位があるんだ!!!」
嘘だろう?
王太子殿下の話と違う。
義姉に付きまとわれて困っていると。
義姉が王太子殿下に惚れ込んでいると。
「はぁ……ま、その様子じゃあ、知らなかったみたいだな。お前が誰に唆されたのかも何となくだが分かった」
溜息交じりに吐かれた兄の言葉は冷たく響いた。
失望した目で見てくる両親よりも、兄の呆れた目が僕にとっては一番堪えた。
前提条件を最初から間違えていたのは僕だった。
「我が娘との婚約を白紙にしていただきたい」
婚約者の父親が子爵家に来て早々言い放ったのは「婚約の白紙」だった。
両親は卒倒しかけ、兄は目を伏せた。
「ど、どういうことでしょうか?」
「おや?わざわざ説明をしなければ分からないのかね」
「一方的過ぎると申しているんです」
「ほぉ?一方的と」
嘲笑う笑みには怒りがます。
だってそうだろ?
こんな一方的な宣言はない。
両親や兄が言えないなら僕が話をするしかない。
「はい。幾らなんでも『婚約解消してくれ』と申されて『はい』と黙って従う者はおりません。理由を仰ってくださらなければ承諾できません」
「なんとまぁ……聞きしに勝る愚かさだな」
「なっ!? し、失礼です!!」
「失礼なのは君の方だ。たかだか子爵家の若造が侯爵家に楯突くという意味を理解できていないのかね」
「横暴な!!家格が上なら何をしても許されると思っているのですか!!?」
「これは面白い。王家という立場を利用して公爵令嬢を貶めた首謀者の一人が何を言っているのか。それとも何かね?自分達は理不尽な事をしても許され、他者にされる事は許さないとでも?まさに道理の通らない話ではないか」
「そ、それは……」
「最初に言っておくが、私が先のない公爵家の猶子である君と娘の婚約を認めたのはヴァレリー公爵家との繋がりを求めた結果だ。それを失った男に用はない。しかも直系の令嬢を罠に嵌め、格上の王家まで巻き込んで公爵家を乗っ取ろうと企むなど言語道断だ!そんな男と娘を結婚させれば我が侯爵家も君達に乗っ取られかねない。それ故に婚約を白紙にするのだ。こちらとしては『婚約解消』でも構わん。その場合、御家乗っ取り計画を家族ぐるみで行おうとしていたと裁判所に訴えるまでだ」
「乗っ取り!?」
何を言われたのか理解できなかった。
そんなこと考えた事がなかったからだ。
「ああ、もしかして君は自分の行動がどういう結果に繋がるのか理解できていないようだ。君を含めた仲良しグループは、ヴァレリー公爵家の乗っ取りを企んだとの噂だ。もっとも噂ではなく事実だがな」
「そんな!!」
「これは子爵夫妻も御存知なかったようだ。まぁ、社交界に顔をだしていないのであれば無理ない話だが」
確かに僕たちは社交に参加していない。というか、僕の事があってできなかった。
それがなぜこんな事になるなんて。
僕が呆然としている間に話は進む。
そして気付いた時には侯爵令嬢との婚約は無かった事になっていた。
それから一年余り後――――
あの日から僕の生活は大きく変わった。
まず両親は離婚。
僕は母に引き取られる事となった。
一時は母の実家である男爵家に身を寄せてはいた。
伯父はそうでもなかったが従兄妹達の僕を見る目は厳しい。厄介者がきた、といったところだろう。
母は伯父の勧めで商人と再婚した。
最初は平民の男との結婚に難色を示した僕だったけど、「再婚相手がいるだけマシだわ」と言う母の言葉に黙るしかなかった。相手の男性は母の幼馴染で、母の事情を全てしった上で結婚をしてくれた。
『この国に住み続けるのは君たちのためにならないと思うんだ。私の店は隣国に本店をおいているから、そちらに行こう』
彼は僕たち母子のために隣国に移住を促してくれた。
『大丈夫。私がついている』
優しく笑う彼に僕は心の中で感謝する事しかできなかった。
彼は僕に大学進学を勧めてくれた。
卒業後に彼の商会に勤務した。
その頃には歳の離れた弟ができていた。
『まさかこの歳で子供ができるなんて』
母だけでなく、彼も驚いていた。因みに僕も驚いた。
小さな弟はとても可愛いかった。目に入れても痛くないとはこのことか。その後も必死に働き、二年後には商会を継いだ。その二十年後に正式な跡取りである異父弟に跡を譲ったのだった。