悪女と罵られたので退場させていただきます!

24.ジェニー王女side

「王女殿下、もう少しお食べになった方がよろしいかと」

「無理よ。気持ち悪くて食べられないわ」

「そうですか……」

 年配の使用人が盆を下げて部屋から出て行った。
 私の妊娠が分ってからずっと自室で軟禁状態。
 この生活はいつまで続くの?

 ……お父様はまだ怒っているのかしら?






『このバカ娘!』

 お父様は怒りで顔を赤くして私を怒鳴り散らしたわ。
 どうして?
 何故、私がお父様に怒られないといけないの?

『お父様……』

『自分が何をしたか分っているのか!』

 何をしたのか?
 子供ができたことを言っているの?
 でも、それはしょうがないじゃない?
 私だけのせいではないわ。

『仮病を使うだけでなく男を連れ込んでいたとは!恥を知れ!』

『お父様、私は……』

『言い訳など聞きたくない!いいか!その胎の子供の責任は相手の男に取らせるぞ!絶対にだ!!』

『相手……』

『そうだ!オーファンラスター公爵家とフリッド・オーファンラスターに責任を取らせる!』

 は?
 フリッド?
 お父様は、フリッドとの子供だと思っているみたい。
 なんの関係もない、という間柄ではないわ。
 でもね。
 子供の父親ではないわね。
 医者も言っていたけど、時期がずれてるんだもの。

『いいか!誰が何と言っても相手はフリッド・オーファンラスターだと言い張るんだ!』

『え?お父様……?』

『お前が誰かれ構わず寝室に引っ込んでいたことをメイドが口を割った!元々、フリッド・オーファンラスター公爵子息とお前は噂になっていたんだ。丁度いいだろう』

『で、でも……。フリッドは婚約者がいるわ。わ、私にも……』

『ははははは!』

 狂ったように笑うお父様。
 怖い。

『自分達に婚約者がいたことを理解した上での暴挙だろうに!』

 血走った目。
 お父様が、怖い。

『すでに、ヴァレリー公爵令嬢とオーファンラスター公爵子息の婚約は白紙になっている!』

『え!?』

『義務を果たさない身持ちの悪い男はお断りだということだろう』

 驚いた。
 彼女はフリッドと結婚するとばかり思っていたから。
 こんなに簡単に婚約がなくなるなんて……。

『お前の婚約も近々なくなる筈だ。本当に愚かなことをしてくれたものだ……』

『お父様……』

『私の、私達の育て方が悪かったのだろうな……』

 先程までの怒りはどこかに消えたのか、お父様は悲しげに目を伏せると、そのまま部屋を出て行ってしまった。
 その日から一度もお父様とは会っていない。
 今まで私に仕えていたメイド達はいなくなり、代わりに年配の使用人が私の世話係になった。

 私は部屋から出るのを禁じられた。
「妊婦だから」とは言われたけど。
 子供を堕ろすことはできなかった。
 その時期は過ぎていると、医者に言われたから。

 どうしてこんなことになったのか分からない。

 年配の使用人は「子供が出来ていなくても、同じだったでしょう」と呟いていた。
 どういう意味なの?
 子供が出来たから私は、軟禁されているんでしょう?

 年配の使用人は言う。

「帝国貴族の公爵令嬢に喧嘩を売る様な真似をなさったのです。遠からず、何らかの処分は受けていた筈ですよ」と――

 分からない。
 どうしてなの?
 私はちょっと彼女に意地悪したかっただけ。
 ただそれだけよ。
 あの澄ました顔を歪ませたかっただけなのに……。

 それだけだったのに……。

 どうして……。


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