悪女と罵られたので退場させていただきます!

28.帝国大使side

 更に男から話を聞けば、救いようのないことまで判明した。
 国王は、王妃殺害後に王妃所生の王子までも手にかけようとしていたらしい。
 結局は失敗に終わったが、聞けば聞くほど度し難い。

 王妃殺害に使われた毒薬もまた問題だった。
 “死の救済”と呼ばれる非常に珍しい毒薬で解毒剤が存在しない代物だ。解毒できない以上、遅かれ早かれ確実に死に至る恐ろしい毒薬。
 “死の救済”は暗殺ギルドが扱う毒の中でも、特に強力なものだという。

『暗殺ギルドの毒薬の中でも、“死の救済”は特別製だ。使い方次第で毒にも薬にもなる。戦場に出る人間なら常備薬として持ってるものだ。……恐怖を和らげる、必需品だな』

『麻薬の一種か』

『似たようなものだが、麻薬と違って中毒性はない。だから怖いともいうが……』

 “死の救済”と呼ばれる理由を垣間見たきたした。
 それと同時に戦場で使用している時は違う名前で呼ばれているのだろう。そうでなければ問題になっている筈だ。
 毒として使用しても苦しくないらしい。
 まるで眠るように死ぬことができると。
 なるほど。
 だから“救済”か。

 王妃だけでなく、自分の息子すら手にかけるとは正気とは思えない。
 王国内の派閥争いが原因なのだろうか?
 それとも「お気に入りの側妃」のせいか?
 いくら考えても分からない。
 王妃を殺す動機が薄すぎた。

『理屈じゃない』

 男の言葉が蘇る。
 人が人を殺すのに大した動機は必要としない、と諳んじた。

 殺すくらいなら離婚すればいい話だが。
 普通に考えてそれは難しい。
 帝国貴族の王妃と離婚すれば国際問題に発展する恐れがあるし、そう簡単に決断できるものでもなかったのかもしれない。王妃の実家は皇室と縁深い。下手をしたら戦争になる可能性もゼロではなかった。
 だが、だからといって我が子を殺すのは論外だ。
 私が国王ならば帝国の血を引く我が子は生かしておく。
 それを「邪魔」に思うとは……。
 薄気味悪い。
 ここまでくると病的だ。狂気を感じる。

「皇帝陛下の指示を仰ごう」

 調査結果と共に逐一報告はしている。
 皇帝陛下ならば何かしらの手を打ってくださるだろう。

 
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