悪女と罵られたので退場させていただきます!

29.謁見

 アーリャナシル帝国に帰国して数日後。
 私はとある場所で、ある人物に謁見していました。

「よくぞ、参られたヴァレリー公爵令嬢よ」

「お久しぶりです。皇帝陛下」

 私は優雅に礼を取りました。
 ここは帝都の中心。謁見の間。
 そうです。目の前にいるのが皇帝陛下です。
 私がなぜ、ここにいるのか?答えは簡単です。皇帝陛下に呼び出されたからです。

「うむ、そちの活躍はよく聞いている」

「恐れ多いことでございます」

「はははは、謙遜を致すな」

 皇帝陛下は楽しげに笑っておられます。
 上機嫌のようです。

「此度の騒動でそちの働きは実に見事であった」

 バカ達が自滅しただけです。
 私は特に何もしていません。まったく何もしていない、とは言い切れませんが。少々、噂を流した程度。あからさまのモノではなく、そうですね、どちらかというと時限爆弾的な感じのモノを。

「そちは我が帝国にとって得難い人材だ」

「身に余る光栄でございます」

 私は再び、礼をしました。
 新参者の元亡命貴族は有能だと証明できたようです。
 元々、皇帝陛下はお父様を高く評価なさっていました。
 そのせいでしょうか。私のことも好意的だったように思います。
 ですが、所詮は父の付属。
 私自身が認められる必要があった。
 それを皇帝陛下はお認められた、ということのようです。

「そちには随分と苦労させてしまった。そこでだ、褒美をとらせようと思ってな」

「褒美、でございますか……?」

 皇帝陛下は頷きました。

「そちの望みを叶えようと思う。何なりと申すが良い」

 私は少し考えました。
 さて、何を願いましょうか?

「では、皇帝陛下」

「うむ、申してみよ。何でもよいぞ」

「皇帝陛下の御心のままに」

「む……?」

「私は、陛下に与えられるものであれば如何なるものでも喜んで拝領致します」

「ははははっ!欲がないのぉ」

 皇帝陛下は更に機嫌よく笑われました。

「そちの忠義、嬉しく思うぞ」

 ここで下手に固辞するとかえって不敬になります。かといって、欲張ってしまうとそれはそれで厄介な案件になりかねません。
 だから、「私は陛下に与えられるものを何でも喜んで頂戴致します」と伝えたのです。
 皇帝陛下はそれで満足されたようでした。
 正直言って、欲しいモノなど特にないのです。
 強いて言えば「安全と安寧」でしょうか。
 そんな目に見えないモノを望んだところで侮られ、足元を見られるのがオチでしょう。

「ふむ…………では、こちらで決めておこう。後日使いを寄越す故、屋敷にて待つように」

「承知しました」

 こうして、私は皇帝陛下との謁見を終えたのでした。
 その後、想像していなかった展開が待ち受けているとも知らずに。


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