悪女と罵られたので退場させていただきます!

30.癒しタイム

 謁見を終え、私は帝都の屋敷に戻って参りました。
 ドッと疲れましたわ。
 私は用意してくれた湯船につかり、疲れを癒します。
 全身を洗い終えると、サーニャのマッサージを受けました。
 サーニャはメイド長からマッサージの技術を伝授されたようで、とても上手なのです。

「お嬢様、いかがですか?」

「とても良いわ」

 私はうっとりと目を閉じました。
 ああ、本当に疲れが取れていくようです。
 これぞまさに癒し。
 至福の一時。
 香油を塗りこみ、隅々までマッサージしてもらうと体もポカポカしてきました。
 癖になりそうですわ。

 この世界に生まれ変わって以来、「貴人は手をつかわない」の意味を実地で味わい尽くしました。
 髪を梳かすのも、爪を整えるのも全て使用人任せ。
 ドレスを着るにも使用人に手伝ってもらわなければ無理です。
 お風呂に浸かりながら髪を洗ってもらうこともそうですが、体を洗ってもらうのも全て人任せ。慣れって怖いですわね。


「そういえば、お嬢様。お聞きしましたか?」

 サーニャが思い出したように言いました。

「何かしら?」

「ボルゴーヌ王国のことです。あちらの国、今、大変らしいですよ」

 サーニャの話では、ボルゴーヌ王国は混乱の真っただ中らしい。

 王女の恋物語に浮かれていた国民は、魔法が解けたかのように怒り心頭だとか。
 彼らに怒る権利など無いと思うのは私だけでしょうか?
 不貞を「真実の愛」「禁断の愛」などと宣って浮かれまくっていたのは自分達ではありませんか。

「お嬢様が婚約白紙になさった影響が出始めたようで、仕事にあぶれる民衆が暴動を起こしたとか」

「あらまあ……」

 それはまた何とも。
 自業自得というところでしょうか。
 そんな騒動の中で王女の妊娠が民衆にバレてしまったらしく、混乱に拍車をかけたとのことです。
 国王は王女の妊娠を伏せていたらしいのですが、それもどうやら無駄に終わってしまったとか。
 王家が責任を取る形で今回の騒動は終息したようですが、それでも腹に据えかねる者は多いようで。

「国王陛下の退位を求める声が大きくなっているようです」

「そう……」

 まあ、当然と言えば当然でしょうね。
 今のところジェニー王女とフリッド様が婚姻したという話は聞かないので、お二人が結局どうなったのかは分からないままです。
 それでもジェニー王女と婚姻を結ばないかぎりフリッド様は牢屋から出してはもらえないでしょう。
 もしかすると、お二人は極秘結婚されて、ほとぼりが冷めた頃に公表するつもりなのかもしれませんが。
 帝国に戻った今、私が個人的に彼らを調べる気はありません。
 婚約白紙になったので、もう他人です。
 他人の込み入った事情に首を突っ込むつもりなどさらさらないですしね。

 そういえば風の噂で、お二人を応援していた方々の大半は婚約者を失ったとか。
「不貞を応援する者など家門に相応しくない」と婚約破棄された方々もいるとかいないとか。
 今更いいますか?と思わなくもありませんが。
 そうそう、私に「愛し合う者達を引き離す悪女」だの「身を引くべきだ」と訴えていた女性は、同じような内容を婚約者に言われて婚約破棄されたとか。
 婚約者の男性に恋人はいなかったようですがどうやら好いた女性はいたらしく、「政略結婚が嫌なのだろう?」「愛し合う者達を引き裂くのは罪なのだろう?」「身を引くべき」と詰め寄られて発狂したとか。
 人様には「別れるべきだ」と、ご大層に言っていたのに。
 自分が同じような立場になったら往生際悪く婚約者に縋りついたそうです。
「そんなつもりじゃなかった」と反論したらしく。
 まったく。どんなつもりで口走ったのかしら?
 でも、まあ……。こちらも自業自得ですわね。
 ご愁傷さま、としか言いようがありませんわ。


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