悪女と罵られたので退場させていただきます!

32.帝国大使side

 数々の証拠と証言者によって、王妃殺害を国王は認めた。
 公表しない代わりに、ボルゴーヌ王国は帝国に全面降伏した。思った通り、国王は、自分以外の王妃殺害に関わった臣下達を秘密裏に殺していた。
 王妃殺しの理由は実にバカバカしいものだった。
 隠し子の存在。

「殺す動機になるものか?」

 私は首を傾げてしまった。
 そもそも国王には寵愛する側妃だっていた。
 愛人との間に子をなしていただけで?
 それが理由だと?
 そんなバカな……と私が思うのも無理ないことだった。

「当時は王妃の力が強かったそうですから」

「王妃が、というよりも帝国をバックにつけた王妃の力がだろう?」

「はい。それに加えて王妃の気性が苛烈であったことも関係があったようです」

 愛人との間の子供が殺されていたらしい。
 子供は生まれて数ヶ月の赤子だったそうだ。
 我が子の死にショックを受けた愛人は、子供の後を追うかのように自害してしまった。

「愛人は、国王陛下の乳母の娘だったそうです」

「乳母の娘ならば貴族出身か。何故、側妃として召し上げなかったのか謎だ」

「乳母の娘は、大人しい女性だったそうです。国王陛下も妃として召し上げて苦労するより、秘密の愛人として置いておきたかったのでしょう」

「それが仇となったか」

「はい」

 なるほど。
 国王の復讐だったのか。
 そうなると側妃を寵愛してたという話も怪しいものだ。
 秘密の愛人を王妃の目から誤魔化すための目くらましだった可能性が出てきたな。
 もしかすると殺された護衛兵は王妃の息がかかったもの達だったのかもしれない。
 そうでなくとも隠し子の殺害になんらかの関わりを持っていたのかも……。
 殺された護衛兵は、亡くなる前日までかなり羽振りが良かったらしいからな。

「今更か……」

 王国の後継者は、帝国貴族に婿入りしてきた王子殿下だ。
 彼が王位を継ぐのが一番良い。
 王妃を母に持つ嫡出子。
 帝国としても王国としても非常に都合が良い。

 国王は退位後、王宮に留まることなく田舎の片隅にある王領で隠居することとなった。
 本人の希望と聞いたが、何故そこなのか。
 亡くなった愛人との思い出の場所かと思ったが、そうでもなかった。

 後から知ったが、その王領は、嘗て王妃と共に訪れた場所であったらしい。
 憎い王妃との思い出の場所を終の棲家と決めた理由は何故なのか。
 分からないことだらけだ。

 そう、分からないといえば、王妃殺害に使用した毒もそうだ。
 私ならば、憎い相手を毒殺するのなら、悶え苦しむ毒を使う。
 だが、国王は違った。

 憎しみ以外の何かが国王夫妻の間にはあったのかもしれない。

 人の心とは複雑なものだ。
 

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