月のうさぎと地上の雨男
 渡は譲と共に帰宅し、風呂を済ませてからスマホを取り出した。

 凪の名前を表示してタップすると、ワンコールでつながった。


『渡くん、お疲れさま! 大丈夫? 怒られた?』

「そんなに。凪は?」

『私は全然。むしろパパに謝られちゃった。でも、(ゆう)はこってりがっつり叱られてる』

「その方がいい」

『ふふ、渡くんがそう言ってくれるのが嬉しい。悠はしばらく別宅に軟禁だってさ。学校以外は外出禁止』


 渡は凪が元気そうなことに安心しつつ、ベッドに腰を下ろした。

 スマホの向こうでは凪があれこれ話している。

 月詠の頭領に半泣きで謝られたこと、一応お叱りもあったことなど。


『正式な手順を踏んで、お見合いに申し立てをすべきだったってさ。今さら言われてもだし、そんな手順があるのも知らないし、パパ連絡つかなかったじゃん!って思うけど、申し訳なさそうな顔はしておいたよ』

「それがいい。俺も大人に相談しろと言われたけれど、月詠の頭領と連絡がつかない時点でどうしようもなかったと思う」

『まあ、結果オーライってことで。週明け、渡くんに会えるの楽しみにしてるね』

「うん。デートで行きたい場所も考えておいてほしい」


 そのあと二言三言交わして、渡は通話を終えた。

 立ち上がって部屋の明かりを消す。


 ふと思い出して、透にメッセージを送った。

 すぐに部屋の扉が叩かれたが、「疲れたから寝る。また明日」とメッセージを送り直し、渡は目を閉じた。
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