月のうさぎと地上の雨男
 翌一日の夕方、渡たちは玄関で美佳と園佳に別れを告げた。

 雫は受験勉強があるし、渡も凪と約束がある。譲と歌帆もそれぞれ仕事があるため、早めに切り上げていた。


「騒がせてしまってすまなかったね」


 困った顔の美佳に、譲が肩をすくめた。


「いや、こちらこそ、申し訳なかった。……佳貴くんは?」

「拗ねてます」


 園佳はムスッと唇を尖らせる。


「ほんと、大学生になっても子供っぽいんだから」

「あまり佳貴兄さんを責めないでください」


 渡が言うと、園佳が目を丸くした。


「佳貴兄さんの気持ちもわからなくはないんです。俺にわかられても嫌でしょうけど。お世話になりました」

「また遊びにきますね」


 渡と雫は頭を下げて先に外へ出る。

 屋敷の前では滝草が車を用意して待っていた。

 渡が乗り込む直前、庭の方から佳貴が走ってきた。


「渡!」

「佳貴兄さん。その」

「渡、今は貸しておいてやるよ」

「は?」


 佳貴がにんまりと笑って、渡が聞き返す前に走り去ってしまった。


「貸すってなんだよ……」


 呟きはどこにも届かない。渡は唇を噛んで車に乗り込んだ。
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