月のうさぎと地上の雨男
放課後、宗輔と別れた渡は高校へと向かった。
校門の前にはいつもどおり月詠の車が止まっていたが、猿渡の姿がない。
渡が不思議に思って車を覗き込もうとしたとき、高校の方から騒がしい声が聞こえた。
「帰るよ、姉さん」
「離して! どういうつもりでこんなことを!」
凪が弟の悠に手を引かれ、怒りを露わにしていた。
「渡くん!」
渡に気づいた凪は泣きそうな顔をしたが、悠は手を離さなかった。
凪を車に乗せようと腕を掴んでいる。
「姉さん、そんな男なんて相手にしないで!」
「やだ! やだやだ! 私が誰と付き合おうが、悠には関係ないでしょ!?」
「なんでそんなひどいことを言うんだよ。こいつと関わったせいで、姉さんはおかしくなったんだ」
渡が割って入ろうか迷っている間に、凪と悠に付き添っていた猿渡が顔をしかめた。
「雨水様、そちらは……」
猿渡に言われて渡が振り返ると、佳貴が歩いてきていた。
「佳貴兄さん……なんで来たんだ」
「僕の婚約者なんだから迎えに来てもおかしくないだろう? むしろ部外者でしかない渡が、なぜここにいるのさ」
「そうだ」
悠が佳貴の言葉に頷いた。
「彼は雨水本家の長男だ。分家の日陰者とは違うんだ」
「悠、なんてことを!」
「姉さんはこいつに騙されてるんだよ。どうするのが家のためになるか、ちゃんと考えてくれないと」
「凪」
聞くに堪えなくて、渡は静かに凪を呼んだ。
「凪……好きだよ」
「渡くん、私も渡くんが好き。渡くんじゃなきゃ嫌だ!」
「分家の分際で!」
そう怒鳴ったのが、悠なのか佳貴なのか、渡にはわからなかったし、どうでもよかった。
まっすぐに凪を見つめた。
「君が、一番幸せになれると思う相手を選んでほしい。家のためじゃなく、君自身のために」
「これだから分家は。いいよな、家のことをなんにも考えなくていいやつはさ!」
「あはは、お前が考えているのは家のことじゃない。自分が美佳さんから逃げたいだけじゃないか」
校門の前にはいつもどおり月詠の車が止まっていたが、猿渡の姿がない。
渡が不思議に思って車を覗き込もうとしたとき、高校の方から騒がしい声が聞こえた。
「帰るよ、姉さん」
「離して! どういうつもりでこんなことを!」
凪が弟の悠に手を引かれ、怒りを露わにしていた。
「渡くん!」
渡に気づいた凪は泣きそうな顔をしたが、悠は手を離さなかった。
凪を車に乗せようと腕を掴んでいる。
「姉さん、そんな男なんて相手にしないで!」
「やだ! やだやだ! 私が誰と付き合おうが、悠には関係ないでしょ!?」
「なんでそんなひどいことを言うんだよ。こいつと関わったせいで、姉さんはおかしくなったんだ」
渡が割って入ろうか迷っている間に、凪と悠に付き添っていた猿渡が顔をしかめた。
「雨水様、そちらは……」
猿渡に言われて渡が振り返ると、佳貴が歩いてきていた。
「佳貴兄さん……なんで来たんだ」
「僕の婚約者なんだから迎えに来てもおかしくないだろう? むしろ部外者でしかない渡が、なぜここにいるのさ」
「そうだ」
悠が佳貴の言葉に頷いた。
「彼は雨水本家の長男だ。分家の日陰者とは違うんだ」
「悠、なんてことを!」
「姉さんはこいつに騙されてるんだよ。どうするのが家のためになるか、ちゃんと考えてくれないと」
「凪」
聞くに堪えなくて、渡は静かに凪を呼んだ。
「凪……好きだよ」
「渡くん、私も渡くんが好き。渡くんじゃなきゃ嫌だ!」
「分家の分際で!」
そう怒鳴ったのが、悠なのか佳貴なのか、渡にはわからなかったし、どうでもよかった。
まっすぐに凪を見つめた。
「君が、一番幸せになれると思う相手を選んでほしい。家のためじゃなく、君自身のために」
「これだから分家は。いいよな、家のことをなんにも考えなくていいやつはさ!」
「あはは、お前が考えているのは家のことじゃない。自分が美佳さんから逃げたいだけじゃないか」