空蝉の絶唱
「でも、せっかくのアイス半分も貰っちゃったな」
「いいって」
「いや、また今度なんか奢るよ」
「いいの!それだと私ばっかり奢ってもらうことになるじゃん」

一方的に与えられる関係はあまり好きじゃない。友達とは対等な関係でいたいっていうのは、私の信条みたいなもの。

「それでよくない?」
「よくない!貰いっぱなしなのはすっきりしないもん」
「へぇ、雪菜って変わってるよね」
「え、そんなに変?普通じゃない?」
「ははっ…変だよ変。十分変わってるって。普通奢ってもらうのは喜ぶことでしょ」

変だ変だと言いながら、湊は面白そうに笑っている。何だか釈然としないけれど、それで湊が笑顔になれるのなら、悪くない。

学校ではほとんど接点が無かった湊だけど、あまり笑う人じゃないって噂は知っている。顔がいいのもあると思うけれど、彼の切れ長な目が周囲に冷徹な印象を与えるからこそ、氷の王子なんて呼ばれているのだろう。

だから彼がこんなに柔らかく笑うことを知っているのは、もしかしたら私だけかもしれないなんて、ちょっとした優越感に浸る。

「そりゃ私だって奢りは嬉しいけどさ、限度ってものがあるでしょう。…ってことだから、次は私の奢り!」
「ふはっ、はははっ。…やっぱり面白いよ、雪菜は」
「…笑いすぎじゃない?」

あんまり笑われると、本当に私が変なんじゃないかと不安になる。というか、私ばっかり笑われているのは面白くない。

「そうかな?」
「そうだよ。学校じゃあ全然笑わないって有名だし」
「…俺の噂って一体どうなっているのさ」

一気に疲れた顔になった湊。

「え、知りたい?私もそこまで詳しくないけど、解説してあげようか?氷の王子について」
「それは封印してくれって言っただろ」
「でも知りたいんでしょ?」
「…やっぱりやめとく」
「あっそ」

せっかく揶揄い倒せるチャンスだと思ったのに。

「…不満そうだね」
「べっつに〜」

そうこうしていると、私の家に着いてしまった。そろそろお腹が空いてくる時間帯。

「それじゃ、また明日な」
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