総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅱ
「……あはは、ごめんごめん。」
口元は笑っているけど、その目はひどく虚脱していて、取り繕う余裕すら残っていないのが分かった。
琥珀はポケットに両手を突っ込み、眩しそうに空を仰ぐ。
「ちょっと寝不足で。どうかしてるね、俺。最近事件続きでさ。」
それだけ言って黙った。
「ちょっと」の範囲じゃないことは、顔を見れば明らかだった。
「……三日は寝てないかな」
「…え、三日!?」
「連続で三件。能力暴走。全部夜中。犯人も捕まってない。……俺の管轄、人手足りてないんだよ」
淡々と語る声が、余計に胸を締め付ける。
三日。七十二時間。
その間ずっと、この少年は拳銃を握って夜の街を駆け回っていたということだ。
能力暴走なら吸血鬼本部にいる私も知っているはずだけど…ハンターはハンターだけで処理しようとするところがある。
こちらに報告が来ていないものもあるのだろう。
「……それ、全然ちょっとじゃないよ…!」
「ハンターなんてそんなもんでしょ。慣れてる」
胸の奥がぎゅっと締まった。
怒りなのか心配なのか、自分でもわからない感情。
──そのとき。
「琥珀?そんなとこで何してんだよ?」
呼ばれた声に、琥珀はぱっと振り返る。
「あー、理央。なんでもないよ、友達とおしゃべりしてただけ〜」
「そんなとこで油売ってないで、早く行くぞ」