総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅱ
現れたのは、長い前髪をセンターで分け、茶色の髪を低い位置で一つに結んだ、中性的な雰囲気の人だった。
琥珀と同じように黒いスーツを着こなしている。
「…というか、その子って…」
「あー……えっと、大学でちょっと縁があって。」
じっと見つめられて、それから、ふっと表情を和らげた。
「朝宮胡桃さん、だよね。噂は聞いてる。」
「え、噂……?」
「君、吸血鬼とハンターの間じゃちょっとした有名人だよ。」
え、私ってハンターの間でも有名人なの…?
「……理央、余計なこと言わなくていいから」
「別にいいだろ。事実なんだし。あ、俺は橘理央だ。琥珀の同僚。」
「は、はじめまして……朝宮胡桃です!」
琥珀の同僚ってことは…この人もヴァンパイアハンターってことだよね。
「こいつがいつもお世話になってます。」
「保護者かよ。ただの友達だっての」
橘さんは腕時計をちらりと見て、琥珀の襟首を掴んだ。
「やば、あと五分で集合だ。行くぞ琥珀」
「……はーい。」
ずるずると連行されながら、琥珀がふと振り返った。
「胡桃も参加するんでしょ?来ないの?」
「あ、うん!行く!」
二人の後ろをついて歩き出しながら、私は琥珀の背中がわずかにふらついているのを見た。
それを橘さんが、さりげなく腕を支えてカバーしている。
……三日も寝てないのに、これから訓練なんて。
本当に大丈夫かな……。