総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅱ
「さーて、俺らもどっかで待機しよっか。開始まで暇だし。」
天音くんの提案で、私たちは通路脇にあるパイプ椅子が四脚置かれた小部屋に落ち着いた。
天井の蛍光灯が「じじっ」と不規則に音を立てていて、壁にかかったモニターには、現在侵入中の他チームの映像がリアルタイムで映し出されていた。
あっけなく脱落する者に、鮮やかに突破する者。
見ていて飽きないけど同時に緊張感も増していく。
ふと横を見ると、琥珀が椅子に座ったまま目を閉じていた。
深く、ゆっくりとした呼吸。
天音くんがそれを呆れたように見つめ、小声で囁いてくる。
「……この状況で寝るって…」
普通に考えたら、緊張感ゼロのやる気がない態度に見えてしまうだろう。
私は慌てて小声で返した。
「…三日、まともに寝れてないんだって」
それを聞いた瞬間、天音くんの瞳が一瞬だけ真剣な色に変わった。
「………マジ?」
琥珀がわずかに身じろぎしたけど、瞼は開かない。
限界なんてとうに超えていたんだろう。
三日間、夜の街を走り回り、見えない影を追い続けていた疲労。
それが今、限界からの反動か、溢れ出していた。