総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅱ
「……あの時と同じ顔してるよ。というか、あの時よりひどい」
「……っ、」
反論しようとしたけど言葉にならない。
天音くんは視線を夜景に向けたまま、静かに続けた。
「ほんとわがまま言うのが下手だよね胡桃ちゃんは。……あいつの前で、我慢する必要なんてないって言ってるのに。」
その声はいつもの軽さを全部剥がした、素の栗栖天音のものだった。
その響きに、私の中で張り詰めていた糸が、ぷつんと音を立てて切れてしまった。
酔いのせいなのか、溜め込みすぎたせいなのか。
限界だった。
「……わたし、っ……ちゃんと……できてる、のかな……っ」
声にならない嗚咽が、喉の奥からせり上がってくる。
私は堪えきれず、隣に座る天音くんのジャケットの袖を、ぎゅっと縋るように掴んだ。
天音くんは一瞬だけ驚いたように体を固くしたけど、すぐに私を自分の肩に引き寄せた。
ぽん、と大きな手が私の頭に乗る。
「……うん。」
頭を撫でる手つきは、どこまでも穏やかで、温かい。
「大丈夫。……全部吐き出していいから。」
静かに、そう言われて。