総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅱ
天音くんには妹さんも弟くんもいるから、こういうの、慣れてるのかもしれない。
「お兄ちゃんパワー」っていうのかな。
その温もりに、私はどうしようもなく安心してしまって、彼の肩に顔を押し当てた。
「……わたしっ……神代さんみたいに、強くないし……っ、みんなみたいに戦えないし……叶兎くんの、隣に……いていいのか、わかんなくて……」
途切れ途切れに、胸の内の毒を吐き出す。
酔いと涙でぐちゃぐちゃだった。
「……無効化の力がなかったら、私なんて……ただの、人間で……っ」
天音くんは黙ったまま、私の頭を何度も何度も撫で続けた。
否定もしない。安っぽい慰めも言わない。
代わりに私が泣き止むまで、ただ静かに寄り添ってくれた。
「……ねえ胡桃ちゃん。」
しばらくして、天音くんがぽつりと言った。
「能力がどうとか、強さがどうとか、そんなの、どうでもいいんだよ。あいつが胡桃ちゃんを選んだ理由、能力が欲しいからだなんて思う?」
「…………」
「違うでしょ。…叶兎は、怖いんだよ…胡桃ちゃんが傷つく事が、なによりも。能力とか関係ない、ただの──馬鹿な男のエゴ。」
天音くんはそれ以上何も言わずに、また私の頭を優しく撫でる。
「……天音。」
不意に、カタンとバルコニーの扉が開く音がした。
その、聞き間違うはずのない声に、私の心臓が大きく跳ねる。