総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅱ
「やっと来た。」
「…ここで、何して……」
「何って酔っ払いの介抱。…お前こそ何やってたわけ? 自分の女泣かせて。」
………顔を上げられない。
天音くんの肩に顔を埋めたまま、私は固まった。
「……それは──」
「弁解は胡桃ちゃんにしなよ。俺にじゃないでしょ。」
天音くんが立ち上がり、私の背中を優しくぽんと叩いた。
「 ……ほら。お迎え来たよ。」
…まって、行かないで…!
天音くんが離れた瞬間、支えを失った体がぐらりと揺れた。
「っ、立てる?」
倒れそうになった私を正面からがっしりと支えたのは、天音くんではなく叶兎くんだった。
顔を見上げると至近距離で、燃えるような赤い瞳と目が合った。
いろんな感情が、喉の奥まで渦巻いてくる。
「会いたかった」という気持ちと、「なんで来るのがこんなに遅いの」という恨めしさが、同時にせり上がってきて。
「……おそい。」
「……」
「……待ってたの、に……っ」
また、涙がぶわりと溢れ出した。
「顔を合わせたくない」なんて言って、連絡を無視していたのは私の方なのに。
やっぱり会いたかったとか、待ってたとか、もう、自分でもわけがわからない。
怒りでも、悲しみでもない。
「じゃ、俺は中戻ってるから。胡桃ちゃん、水ちゃんと飲みなね。」
天音くんはひらひらと手を振って、いつもの軽やかな足取りでホールの中へと消えてく。
夜のバルコニーには、私と叶兎くんの二人だけが残された。