総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅱ



「やっと来た。」

「…ここで、何して……」

「何って酔っ払いの介抱。…お前こそ何やってたわけ? 自分の女泣かせて。」



………顔を上げられない。

天音くんの肩に顔を埋めたまま、私は固まった。



「……それは──」

「弁解は胡桃ちゃんにしなよ。俺にじゃないでしょ。」



天音くんが立ち上がり、私の背中を優しくぽんと叩いた。



「 ……ほら。お迎え来たよ。」



…まって、行かないで…!

天音くんが離れた瞬間、支えを失った体がぐらりと揺れた。



「っ、立てる?」



倒れそうになった私を正面からがっしりと支えたのは、天音くんではなく叶兎くんだった。


顔を見上げると至近距離で、燃えるような赤い瞳と目が合った。

いろんな感情が、喉の奥まで渦巻いてくる。


「会いたかった」という気持ちと、「なんで来るのがこんなに遅いの」という恨めしさが、同時にせり上がってきて。



「……おそい。」

「……」

「……待ってたの、に……っ」



また、涙がぶわりと溢れ出した。


「顔を合わせたくない」なんて言って、連絡を無視していたのは私の方なのに。

やっぱり会いたかったとか、待ってたとか、もう、自分でもわけがわからない。

怒りでも、悲しみでもない。



「じゃ、俺は中戻ってるから。胡桃ちゃん、水ちゃんと飲みなね。」



天音くんはひらひらと手を振って、いつもの軽やかな足取りでホールの中へと消えてく。



夜のバルコニーには、私と叶兎くんの二人だけが残された。









< 227 / 242 >

この作品をシェア

pagetop