総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅱ
「っ、……いつも誰かに囲まれて、人気者で…」
「……俺に寄ってくる奴なんて、権力目当てばっかりだよ」
「そんなわけないでしょ!」
思わずバルコニーに私の叫びが響いた。
自分でもびっくりするくらい大きな声が出てしまって、慌てて両手で口を押さえる。
「……あ、……その…。だから…自信、なくなっちゃって…」
自信がなかった。
能力でも地位でもなく、ただ純粋に、「赤羽叶兎が選んでくれた自分」に。
叶兎くんは、そっと自分の額を私の額に優しくくっつけてきて。
「……馬鹿。……もう1度言うから、瞬きもしないでちゃんと聞いてて。」
至近距離で、お互いの視線が複雑に絡み合う。
「俺は、胡桃以外いらない。能力とかどうでもいい。……胡桃だから、隣にいてほしい。他の誰でもない、胡桃に」
その真っ直ぐすぎる言葉に頬を赤らめながら、瞳を揺らした。
「……うんっ……」
ずっと、不安だった。
周りの目とか、吸血鬼界のしきたりとか、世間に認められるとか……そんな高い壁ばかりを見ていたけど。
今、目の前にいる一番大切な人が、私自身を認めてくれている。それだけで、十分だった。
神代さんみたいに完璧にならなくたっていい。みんなみたいにかっこよく戦えなくたっていい。
私は私にできるやり方で、彼の隣に居続ければいいんだ、って。
そう思えた。