総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅱ
叶兎くんの手は、優しく後頭部を支えてくれていて。
しばらくして名残惜しそうに牙が抜かれると、つぅ……と一筋の赤い線が首元を伝った。
叶兎くんは親指でその血を拭い取ると、そのまま自分の唇へと運ぶ。
舌が指先を舐め取る様子が、心臓に悪いほど色っぽくて。
……っ……。
私はもう、息も絶え絶えだった。
涙で目は潤み、頬は火照り、純白のドレスは乱れきっている。
自分が今、どんな顔をしているかなんて、想像しただけで恥ずかしくて爆発しそうだった。
「……いい顔。」
叶兎くんは短く呟いて、血の滲む傷口にもう一度口づけた。
今度は牙ではなく、柔らかい唇で。
ちゅ、と音を立てて。
傷口を塞ぐように舐めてから、顔を上げた。
数秒間、見つめ合う。
どちらも何も言わなかった。
交わされる視線だけで、言葉以上のものが伝わっていたから。
「……帰ったら、続き。」
低い声で耳元に落とされた言葉。
真っ赤になって固まる私を余所に、叶兎くんは手際よく私の乱れたドレスを直し始めた。
ファスナーを上げ、ずり落ちた肩のストラップを丁寧に元に戻す。
「……つ、続きって……」
「聞きたい?」
「……い、いい!聞かない!」
ぶんぶんと首を振ると、叶兎くんは満足そうに口の端を吊り上げた。