総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅱ



叶兎くんの手は、優しく後頭部を支えてくれていて。


しばらくして名残惜しそうに牙が抜かれると、つぅ……と一筋の赤い線が首元を伝った。



叶兎くんは親指でその血を拭い取ると、そのまま自分の唇へと運ぶ。

舌が指先を舐め取る様子が、心臓に悪いほど色っぽくて。



……っ……。


私はもう、息も絶え絶えだった。

涙で目は潤み、頬は火照り、純白のドレスは乱れきっている。


自分が今、どんな顔をしているかなんて、想像しただけで恥ずかしくて爆発しそうだった。



「……いい顔。」



叶兎くんは短く呟いて、血の滲む傷口にもう一度口づけた。


今度は牙ではなく、柔らかい唇で。

ちゅ、と音を立てて。


傷口を塞ぐように舐めてから、顔を上げた。



数秒間、見つめ合う。



どちらも何も言わなかった。

交わされる視線だけで、言葉以上のものが伝わっていたから。



「……帰ったら、続き。」



低い声で耳元に落とされた言葉。


真っ赤になって固まる私を余所に、叶兎くんは手際よく私の乱れたドレスを直し始めた。

ファスナーを上げ、ずり落ちた肩のストラップを丁寧に元に戻す。



「……つ、続きって……」

「聞きたい?」

「……い、いい!聞かない!」



ぶんぶんと首を振ると、叶兎くんは満足そうに口の端を吊り上げた。



< 238 / 248 >

この作品をシェア

pagetop