総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅱ
「…でも俺、胡桃が襲われたこと隠してた事についてはまだ怒ってるからね?」
「えっ……」
笑ってる。にこってしてる。
それが一番怖いやつだと、私は知っている。
忘れてたなんて、口が裂けても言えない。
「さっきの俺の態度は…本当に悪かったと思ってる。胡桃の意見も聞かずに、一方的に否定した。…ほんとに、ごめん。…でも、それとこれとは別問題」
謝罪と宣告が同じ文に同居している。
器用というか、ずるいというか。
「……あ、あの……反省してます……ほんとに……」
叶兎くんが私の乱れた髪を整える指先が、わざとらしく耳たぶをかすめた。
「悪い子にはお仕置きが必要だよね」
さらっと恐ろしいことを言う。
「お、お仕置きって何……!?」
私の問いには答えず、叶兎くんは立ち上がると、王子様のように優雅に手を差し出してきた。
「帰ろ?」
「……や、優しくしてね……?」
叶兎くんは、最高に綺麗な微笑みを浮かべて。
「胡桃次第かな」
私は悟った。
あ、これ……今日、絶対一晩中寝かせてもらえないやつ……!
バルコニーに静かな夜風が吹き抜ける中、青白い月明かりが、寄り添い歩く二人の影を優しく照らしていた。