総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅱ
「……これで何人目かな」
数える気も起きないといった様子で、男は無造作に肩をすくめる。
実験道具を扱うような、あまりにも冷酷な手つき。
「……彼なら、きっと違う結果が出る。」
写真は、裏返しにしてデスクに置かれた。
男は優雅に足を組み直し、暗闇の中で薄く、三日月のような笑みを浮かべる。
「まあ、彼女を使えば、接触の口実はいくらでも作れる。十数年ぶりの契約者、丁寧に扱わないと。」
目は笑っていた。だがその奥に光るものは、研究者の好奇心だけではない。
そこにあるのは、十数年という長い歳月の中で煮詰められ、真っ黒に濁りきった感情。
「……いつか完成させてみせるから」
復讐。執念。
あるいは、救済への渇望。
さまざまな負の感情が凝縮されたその闇は、底が見えないほど深い。
遠方の街中では、何も知らない叶兎と胡桃が寄り添って歩いている。
その足元に忍び寄る影に気づく者は、まだ誰もいなかった。