総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅱ
「麻酔銃とかじゃないよ。もっと細い。……縫い針くらいの太さの何かで、血管に直接何かを入れてるような痕跡」
叶兎くんと時雨くんの視線が一瞬交差した。
二人の頭に浮かんだ結論は同じだっただろう。
「誰かが、意図的に吸血鬼に何かを投与して暴走させてるってことか……」
「そう考えるのが自然だと思う。しかも、本部が把握してない新しい能力か、薬物か…とにかく既存のデータベースに該当なし。」
叶兎くんは重い溜息をつき、椅子の背にもたれて天井を仰ぎ見た。
「……犯人の目的がわからないな。無差別だとしても、選別してるにしても、法則が見えない。…どちらにしても、被害者が増える前にいい加減犯人を突き止めないと。」
「……それと、胡桃が屋敷の庭で襲われた件との関係も気になるよね。同一犯かは断定できないけど…」
時雨くんが私に視線を向ける。
あの恐怖の夜の記憶が蘇って、私は無意識に自分の腕をさすった。
「……でも。あの時、襲ってきた相手に私の『無効化』を使おうとしたんだけど……全然、効果がなかったの。能力暴走っていうより、もっと理性を失った、純粋な吸血衝動に突き動かされているみたいで……」
私の一言で空気が変わった。
叶兎くんと時雨くんが同時に私を見る。
「……無効化が、全く効かなかった?」
「う、うん……能力暴走なら無効化で止められるはずなのに、あの人には何も……」