総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅱ



たしかにあの時私は必死に能力を発動させた。

それなのに、相手の狂ったような力は微塵も揺らがなくて。



「……つまり、あれは暴走じゃなかった。」



叶兎くんが指を顎に当てて、深く考え込む。



「胡桃。他に何かおかしかったことは?」



懸命に記憶を辿っていると、時雨くんがさらに踏み込んだ疑問を口にした。



「……でも、もしあれがただの吸血衝動だったとしたら、逆に変じゃない?なんでわざわざ屋敷まで入ってきてて、胡桃を狙ったの。」

「…胡桃の能力を知った上で、試した? 」



ぞわり、と背筋を冷たいものが走った。



「……もし、犯人が意図的に吸血鬼を暴走させられるなら。能力の無効化を持つ胡桃は邪魔な存在になる。排除したいか、利用したいか…」



叶兎くんは、テーブルを拳で叩いた。



「どっちにしろ胡桃には近づけさせない。」



絞り出すような声に、激しい怒りが滲んでいた。



「…捕まえた奴の尋問は特警が受け持ってるけど、誰も敵の正体を知らないみたい。胡桃を襲った奴はハンター側が拘束してるけど、そいつも記憶が曖昧で使い物にならないって」



重苦しい沈黙が落ちる。


有力な手がかりはなし、犯人像すら掴めない。

正体不明の敵というのが、何よりも一番厄介だった。



< 245 / 254 >

この作品をシェア

pagetop