総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅱ
たしかにあの時私は必死に能力を発動させた。
それなのに、相手の狂ったような力は微塵も揺らがなくて。
「……つまり、あれは暴走じゃなかった。」
叶兎くんが指を顎に当てて、深く考え込む。
「胡桃。他に何かおかしかったことは?」
懸命に記憶を辿っていると、時雨くんがさらに踏み込んだ疑問を口にした。
「……でも、もしあれがただの吸血衝動だったとしたら、逆に変じゃない?なんでわざわざ屋敷まで入ってきてて、胡桃を狙ったの。」
「…胡桃の能力を知った上で、試した? 」
ぞわり、と背筋を冷たいものが走った。
「……もし、犯人が意図的に吸血鬼を暴走させられるなら。能力の無効化を持つ胡桃は邪魔な存在になる。排除したいか、利用したいか…」
叶兎くんは、テーブルを拳で叩いた。
「どっちにしろ胡桃には近づけさせない。」
絞り出すような声に、激しい怒りが滲んでいた。
「…捕まえた奴の尋問は特警が受け持ってるけど、誰も敵の正体を知らないみたい。胡桃を襲った奴はハンター側が拘束してるけど、そいつも記憶が曖昧で使い物にならないって」
重苦しい沈黙が落ちる。
有力な手がかりはなし、犯人像すら掴めない。
正体不明の敵というのが、何よりも一番厄介だった。