総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅱ
「え…叶兎くん、ひとりで行くつもり…?」
時雨くんは眉をひそめた。
「万が一相手と鉢合わせて、意図的に吸血鬼を暴走させる方法を相手が使ってきたらどうするんだよ。危険すぎる。」
「俺は血筋が強いし契約で体も強化されてる。それに俺の能力なら、暴走する前に自分で抑え込めると思う。…むしろ、下手に仲間引き連れてまとめて暴走される方が厄介。」
…たしかに、叶兎くんの言ってることは一理ある。
…でも、そんな危険なの…。
時雨くんがちらりと私を見た。
言いたいことは明白だった。叶兎くんを囮にするような作戦を私がどう思うか。
私は唇をぎゅっと結び、地図を見つめたまま黙り込んでしまった。
「……胡桃。」
名前を呼ばれて顔を上げる。
そこには、もう迷いを断ち切った、揺るぎない決意を秘めた叶兎くんの瞳があった。
「心配しないで。俺は暴走しないし、そんな簡単にやられたりしない。大丈夫だよ」
「……っ、」
反論の言葉が喉まで出かかったけど、飲み込んだ。
叶兎くんの言っていることが戦術として正しいことも分かっている。
もし大勢で行って仲間が全員敵の操り人形になったら、それこそ目も当てられない事態になる。