総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅱ
「……せめて、無効化の範囲内に、私がいられるようにして。何かあった時に…すぐ届く距離に。」
私の必死な訴えに、時雨くんは小さく息を吐いた。
「まあ、それが妥協点か。」
「……」
一瞬、叶兎くんが黙った。
私を危険な場所に連れて行くことへの葛藤がその顔にちらりと見えた。
「……分かった。 」
……!
「ただし、俺の傍を絶対に離れないこと。俺がいないところで胡桃がまた襲われるのは嫌だし、無効化は保険になる。だから、今回は連れて行くけど…。絶対に危険な事はしないで。」
「う、うん!約束する!」
あの合同訓練の後、神代さんは本部から特警への勤務に戻った。
私が少しでも不安を感じるなら……という、叶兎くんの気遣いだったのかもしれない。
その代わり、事件が解決するまでは、私の単独行動は一切禁止。
それが彼との絶対の約束だった。
時雨くんが資料をまとめて立ち上がる。
が、ドアノブに手をかけたところで振り返った。
「……叶兎。油断だけはしないでよ。」
「してないよ。誰に言ってるの、それ。」
時雨くんは、どこかじとっとした呆れたような目で彼を見た。
「胡桃のことになると判断鈍るでしょ、あんた。」
図星を刺されたのか叶兎くんは、言葉を失って沈黙する。
時雨くんは可笑しそうに肩をすくめると、そのまま部屋を出ていった。