総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅱ



時雨くんが九条くんと蓮水さんに向き直り、指示を出した。



「永季と秋斗は、ここで外周の待機。建物から逃げ出してきた奴がいたら、確実に押さえて」

「了解。……つか、中入る組は大丈夫なのかよ。」



蓮水さんの少し心配そうな視線が、私と叶兎くんに注がれる。



「俺と胡桃、天音も俺たちと一緒に来てもらう。…一応無断で入るから、何かあったら魅了で足止め要因。時雨には正面口の近くから空間把握で状況見つつ俺に伝達してもらう。」

「まかせて。」



天音くんはぱちんとウインクして笑った。



「…本当は全員で行きたいところだけど、万が一全員暴走なんてことになったら胡桃の負担が大きすぎるし、せめて2人までに抑えたいから」



…私で役に立てるなら、少しぐらい無茶してもいいのに、と思うけど、それに関して叶兎くんは断固拒否だった。

私の身を何よりも心配してくれるのは嬉しいけど、今の私には叶兎くんのことが一番心配だ。


そんな不安を見透かしたように、叶兎くんが私の頭をポン、と優しく撫でてくれた。



六人の配置が決まると、時雨くんと蓮水さん、九条くんが正面入口の外側に残り、私、叶兎くん、天音くんの三人は、偽造されたIDカードをかざして、ひっそりと静まり返った病院の裏口から内部へと滑り込んだ。


中へ入ると、冷たく澄んだ消毒液の独特な匂いが、ツンと鼻を突く。


深夜の病院は静まり返っている。


天井にある非常灯の弱々しい薄緑色の光だけが長い廊下をぼんやりと照らし出していた。


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