総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅱ
「……誰もいない。夜勤の看護師くらいいるでしょ普通。」
天音くんの囁きが、ひんやりとした廊下に響いた。
…その通りだった。
本来なら人の気配があるはずのナースステーションには人影がなく、ただ数台のモニターだけが、無機質な光を虚しく放っている。
……嫌な予感がする。
まるで、私たちが来るのを分かっていて、わざと人払いをされたみたい。
「……全員、足音消して。」
叶兎くんの言葉に無言で頷いた。
叶兎くんが先頭で道を切り開き、私がそのすぐ後ろ、そして天音くんが背後を固める。
奥へ進むと、突き当たりに地下へと続く階段を見つけた。
普段は施錠されているであろう鉄扉が──半開きになっている。
「……叶兎くん、これ……」
足を止めて、鉄扉の隙間を覗き込んだ。
底知れない暗闇。そしてそこから、微かに「甘い変な匂い」が漂ってくる。
血の匂い?
…いや、もっと薬品に近い、鼻の奥がツンとするような異質な臭い。
叶兎くんの表情が、かつてないほど険しく歪んだ。
「……何かあるね。降りるよ。…天音、後ろ頼んだ。」
「了解」
静かに階段を下りていくと、一段ごとに空気が重く、冷たくなっていった。