総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅱ
地下に降りると、分厚い防火扉の向こうからかすかに機械の駆動音が聞こえてくる。
叶兎くんが防火扉にゆっくりと手をかけ、一気に押し開けた。
そこに広がっていたのは、病院の地下にあるべきではない、異様な光景。
ずらりと並んだ銀色の冷凍保管庫。
壁にはまるで血管のように不気味なチューブが這い回り、中央の作業台には注射器とフラスコが理路整然と並べられている。
──研究室。
それも、光の当たらない場所で作られた、恐らく違法な実験場。
そして奥のデスクに一人の人影があった。
くるりと椅子が回り、一人の男が姿を現す。
白衣に銀縁の眼鏡、柔和な顔立ちに穏やかな笑み。
三十代半ばに見えるその男は、まるで来客を迎えるかのような余裕で私達を見た。
「あぁ、来てくれたんだ。」
来てくれた……?
まるで、私たちがここに来るのをずっと待っていたみたい。
全員の警戒が一気に跳ね上がった。
「…こんな場所で、何してる」
叶兎くんが低い声で言うと、白衣の男はゆっくりと立ち上がって両手を見せた。
武器はない、というポーズ。
でもその動作は落ち着き払っていた。
侵入者を前にしてこの態度。
慣れているのか、それとも別の理由か。