総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅱ
──そして、夜明け。
会議室のテーブルには、空になったコーヒー缶と、食べかけのおにぎりの包み紙が散乱していた。
窓の外が白み始め、鳥の声が微かに聞こえてくる。
「……整理する。突入は今夜。月が雲に隠れるタイミングで地下水路から侵入。第一班が前線で叶兎の捜索と救出、第二班が施設内の制圧と敵戦力の排除。さっき決めた通り、第一班は…胡桃と、楪。」
琥珀は手慣れた手つきで拳銃のマガジンをカチリと確認した。
「りょーかい。人間同士のペアってわけだ」
私の無効化があれば、相手の特殊な罠を無力化できるし、琥珀も人間だから吸血鬼用の罠は効果がない。
万が一相手が吸血鬼特効の能力を使ってきても琥珀なら対応できるし、戦うこともできる。
だから前線へ行くのは、この二人が最も適任だった。
「…うん。頑張る」
「……正直、この組み合わせは賭けだけど。で、残りのメンバーは地上から陽動をかける」
琥珀は銃を腰のホルスターに収め、立ち上がった。
「じゃあ、俺は一旦装備を整えてくるよ。君たちの分も用意する。能力が封じられた場所じゃ丸腰も同然だからね。……夜までに戻ってくる」
琥珀は軽く手を振って、朝霧の立ち込める屋敷の外へと消えていく。
その背中が街の光に溶けていくのを、私は黙って見送った。