総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅱ
…正直、複雑な気持ちだった。
確かにハンターにとって吸血鬼は敵だ。
情けをかけるなんて、普通はありえない。
もし、叶兎くんが目の前で暴走してしまったら……その時、琥珀は迷わず銃を向けるんだろうか。
「…もし、琥珀が裏切ったら、私が、止める」
もし本当にそんな事があったら、私が前に出て叶兎くんを庇ってでも止める。
……ハンターは手段を選ばないかもしれないけど…きっと琥珀は、人間の私を撃つことはしないと思うから。
そして時雨くんは少しだけ驚いたように目を見開き、それから力なく苦笑した。
「……胡桃らしいね。…まあ、もしもの時は、俺もフォローする」
時雨くんも立ち上がり、ドアに向かった。
振り返らずに一言だけ残す。
「叶兎、絶対助けよう。…夜までの間、胡桃も休んで。」
足音が廊下の向こうに消えて、会議室には私だけが残された。
嵐の前の静けさのような、妙に冷たい朝。
自室に向かう廊下を歩いていると、ふと足が止まった。