総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅱ
庭に面したテラスに一人、手すりにもたれて空を見上げている人影。
金髪が朝日に透けて、眩しく光っている。
「……あ、胡桃っち」
振り返った天音くんの水色の瞳の下には、うっすらと隈ができていた。
「天音くん…」
私に気づいた天音くんはいつもの軽い笑みを浮かべようとして失敗したのか、口角が中途半端に上がったまま止まる。
「……ごめん、なんか変な顔してた?」
天音くんは手すりから背を離して、ポケットに手を突っ込んだ。
視線が一瞬だけ地面に落ちる。
「……叶兎のこと、さ」
声が、いつもよりずっと低かった。
「俺があの時、もっとちゃんと動けてたら……あいつが連れ去られる前に、止められたかもしれないのにって」
「……天音くんのせいじゃないよ。…むしろ、あの状況じゃ、私の方が動けたわけだし…」
天音くんはふっと自嘲気味に息を吐いた。
天音くんも……本当は、すごく悔しくて、心配なんだよね。
風がテラスを吹き抜け、天音くんの髪が揺れる。