総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅱ
知らない記憶が、嵐のように頭の中を駆け巡る。
見たこともない景色、聞いたことのない誰かの笑い声、触れたことのないはずの温度。
誰のものかも分からない血の味が舌の上に広がる錯覚。
それが何十、何百と重なって、一つの器に無理やり注ぎ込まれていた。
「………入って、…くるな……っ!」
「おお……すごい。まだ意識を保っているのか。流石、器の強度が桁違いだよ」
男が感心したように、ペンを走らせてメモを取っている。
その手には次の、さらに色の濃い液体が入った注射器が握られていた。
男の指が、再び俺の剥き出しの首筋に触れる。
「ッ……触んな──!」
怒声と同時に、反射的に体が跳ねて重い鎖がジャラリと鳴り響く。
でも、それだけだ。
普段なら、この程度の壁や床ごと施設をぶち破れるはずの力が……今は指先一つ分すら湧いてこない。
無情にも、三本目の針が首筋に深々と刺さった。
「……っ!!!」
背骨を直接握り潰されるような圧迫感。
──そして来たのは、喉の渇き。