総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅱ
数本の注射がさらに立て続けに打たれた直後、異変は起きた。
「……な、んだ……これ……」
俺の右手の指先が、ぼんやりと光り始めたのだ。
淡い、禍々しいほどの紫色の光。
見覚えのない、知らない色。
俺の能力は身体能力の強化だ。
こんな超常的な現象は、今までの人生で一度も起きたことがない。
男のペンが止まり、その目が見開かれた。
「……嘘でしょ。本当に適合した?」
光は脈動するように強さを増し、やがて俺の全身を包み込んだ。
その瞬間、部屋の空気が一気に凍りつく。
「……、冷たっ……!」
猛烈な冷気と共に氷の粒子が宙に舞い、俺を縛る拘束具がみるみるうちに白い霜で覆われていく。
皮膚に張り付いた金属が凍りつき、身じろぎするたびに肉ごと引っ張られる感覚が走った。
なのに俺はその痛みを感じていなかった。
頭がおかしいほど澄んでいる。
……は、
自分が何をしているのか分からなかった。
冷気がさらに膨れ上がり、部屋の壁にピキピキと亀裂が入った。
天井からは鋭い氷柱が垂れ下がる。