総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅱ





通りを少し進んだ先で、叶兎くんが足を止めた。



「ここ」



指差された先にあったのは、水色の屋根の小さなお店だった。

木製の看板に、少し色あせた文字。


でも、扉の前には季節の花が飾られていて、丁寧に手入れされているのが分かる。



「昔からある店でさ。小さい頃、よく来てた」



どこか懐かしそうな目をしながら、叶兎くんがカチャンとドアを開ける。

カランカラン、と頭上で鳴る澄んだ鈴の音が、静かな店内に優しく響き渡った。


「いらっしゃ——」



顔を上げた店主さんは、一瞬きょとんとして、それから目を見開いた。



「……あら?」



次の瞬間、ぱっと顔が明るくなる。



「まあ!叶兎くんじゃない!?」

「お久しぶりです」



懐かしそうに笑う叶兎くん。



「大きくなったわねぇ……もう、すっかり立派になっちゃって」



店主さんのお母さんみたいな眼差しに、叶兎くんは少しだけ照れたように「はは」と笑った。

普段の本部で見せるキリッとした表情や、二人きりの時に見せる甘い顔とも違う、素朴で年相応な笑顔。

それを見られただけでも、なんだかすごく得をした気分になる。


すると、店主さんの温かい視線が、叶兎くんの隣にいる私へと向けられた。



「……で〜?」



一拍置いて、にやりと笑う店主さん。



「その可愛い子は?」



急に注目されて、思わず背筋が伸びた。




< 31 / 433 >

この作品をシェア

pagetop