総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅱ
通りを少し進んだ先で、叶兎くんが足を止めた。
「ここ」
指差された先にあったのは、水色の屋根の小さなお店だった。
木製の看板に、少し色あせた文字。
でも、扉の前には季節の花が飾られていて、丁寧に手入れされているのが分かる。
「昔からある店でさ。小さい頃、よく来てた」
どこか懐かしそうな目をしながら、叶兎くんがカチャンとドアを開ける。
カランカラン、と頭上で鳴る澄んだ鈴の音が、静かな店内に優しく響き渡った。
「いらっしゃ——」
顔を上げた店主さんは、一瞬きょとんとして、それから目を見開いた。
「……あら?」
次の瞬間、ぱっと顔が明るくなる。
「まあ!叶兎くんじゃない!?」
「お久しぶりです」
懐かしそうに笑う叶兎くん。
「大きくなったわねぇ……もう、すっかり立派になっちゃって」
店主さんのお母さんみたいな眼差しに、叶兎くんは少しだけ照れたように「はは」と笑った。
普段の本部で見せるキリッとした表情や、二人きりの時に見せる甘い顔とも違う、素朴で年相応な笑顔。
それを見られただけでも、なんだかすごく得をした気分になる。
すると、店主さんの温かい視線が、叶兎くんの隣にいる私へと向けられた。
「……で〜?」
一拍置いて、にやりと笑う店主さん。
「その可愛い子は?」
急に注目されて、思わず背筋が伸びた。