総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅱ
あの男、一体どこに隠れてるんだか……。
連続暴走事件のすべての元凶であり、あの時、叶兎くんを攫って残酷な実験を行った張本人。
その姿は、未だに深い霧の向こうだった。
緊迫した沈黙が流れる中──突如として、叶兎くんの携帯がけたたましく着信を告げた。
部屋にいた全員の視線が集まる。
叶兎くんはすぐに通話ボタンを押し、そのまま携帯を机の上にコト、と置いた。
「…朔から」
そう言って、叶兎くんが画面をタップしてスピーカーに切り替える。
すると、受話口から聞き馴染んだ、どこか淡々とした声が響いた。
『進展ないって聞いてさ』
「ないね。完全に足取りが途絶えてる」
『……僕の能力、使えるかもしれないと思って』
朔の唐突な言葉に、私だけでなく、部屋にいた時雨くんたちも一斉に顔を上げた。
「朔の能力が……?」
思わず尋ねると、朔は冷静に言葉を続ける。
『暴走して捕らえられた吸血鬼は、特殊警備隊が尋問してもみんな「記憶が曖昧だった」って言ってたって聞いた。けど……僕の能力は精神に干渉するものだから…彼らの脳内に直接潜り込めば、何か違う反応が出るかもしれないって思ったんだよね』
朔の能力──洗脳は、精神に直接干渉する能力。
尋問で記憶が曖昧だったのは、おそらく何らかの方法で記憶を消されているか、あるいは認識を歪められているか……?
もし朔の力でその精神の防壁を無理やり突破できるのだとしたら…。