総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅱ
「……確かに、使えるな。」
叶兎くんの瞳に、鋭い光が宿る。
『でしょ。けど、僕が特警に直談判したところで取り合ってくれないだろうし。叶兎から上層部に話を一言通してくれたらな、と思ってさ』
「…分かった。俺から話を通す」
『ありがと、頼んだよ』
それだけ言うと、ぷつりと通話が切れた。
「……正直、完全に盲点だったな。精神系の能力を使って記憶に直接切り込むという発想は」
時雨くんが感心したように、けれどどこか悔しそうに呟いた。
「……今から、特殊警備隊の本部に行こう」
点滴が外れたばかりの叶兎くんが、すぐさま椅子から立ち上がる。
「叶兎、ここ数日、血をカプセルで補ってるんだから本調子じゃないでしょ。あんまり無理しないでよ」
時雨くんが慌てて背中に声をかけた。
カプセルの人工血清では、本物の血のような栄養や力は得られないらしい。
今の叶兎くんの身体は、私たちが思う以上に悲鳴を上げているはずだ。
けれど叶兎くんは振り返り、真っ直ぐに私を見据えた。
「無理するしないの話じゃない。──時間がない」
時間がない…。
その言葉は、私の胸に重く突き刺さった。
それは紛れもない事実で。
SNSでは今も叶兎くんを罪人として扱う動画が燃え続け、吸血鬼の暴走は止まらず、犯人の足取りは掴めない。
ここで私たちが足踏みをしていれば、本当に取り返しのつかない最悪の結末を迎えてしまう。